当番医の濃厚接触に休業補償 鶴岡市など新制度 全国でもまれ


公設の休日夜間急患センターで当番の開業医が新型コロナウイルス感染者に濃厚接触し、自らの医院を臨時休業せざるを得ない場合に備え、山形県の鶴岡、酒田両市が手当を新設した。感染に至らないと保険などで休業補償されない可能性があり、地域医療を守る狙いがある。医療関係者は「画期的な制度」と評価し、全国への広がりを期待する。 鶴岡市は4月、市の休日夜間診療所や休日歯科診療所に当番勤務し、新型コロナの濃厚接触者とみなされて自身の医院や薬局を休む際、休業手当を支給する制度を創設した。支給額は1日当たり医師30万円、歯科医師21万円、薬剤師7万2000円。 両診療所には、鶴岡地区医師会などが開業医を日替わりで派遣。当番医は、入り口で電話越しに来所者に症状を聞くなどの警戒態勢を取るが、感染が疑われる患者と接する恐れはある。 同医師会の土田兼史会長は「感染して休業した場合は医師個人の保険などが適用され得るが、濃厚接触に伴う休業をカバーする仕組みはなかった。各医師の医院存続に関わる問題だった」と市の対応に感謝する。 山形県内には鶴岡など9市に計11カ所の休日夜間急患センターがある。酒田市も今月7日、市の休日診療所で濃厚接触や感染した場合、当番の医師と薬剤師に休業手当を支給する制度を新設した。 医科と歯科の開業医6割強が加入する全国保険医団体連合会(東京)によると、同会の共済制度では濃厚接触者として休業しても、共済金受給のために第三者の医師に「感染疑い」を証明してもらう必要がある。実際は無症状で受診基準にも該当しないなどの理由で証明を得られない事例が考えられるという。 担当者は「共済の仕組みには限界がある。当番医に対する休業手当は初耳だが、貴重な制度で全国に広がってほしい」と話す。 日本医師会の小玉弘之常任理事は「休日夜間急患センターの医療従事者が濃厚接触した場合、公益性が高く、公費を投じやすいと思われる。適切な予防策を取れば、感染者を診察しても濃厚接触に該当しないとの周知も必要」と指摘する。 センターは全国に約570カ所あり、新型コロナの感染拡大を受け、診療休止や時間短縮の動きがある。 鶴岡市の担当者は「休日夜間診療を維持する意義や当番医の責任感をくんで、本来は国で支援制度を設けてほしい」と訴える。 山形以外の東北5県のセンター数は青森3、岩手4、宮城11、秋田2、福島12。

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