高齢者施設のクラスター封じ込めへ 大阪府「スマホ検査センター」12カ所に


新型コロナウイルスの感染拡大で高齢者施設でのクラスター(感染者集団)が多発しているとして、大阪府は21日、重症化リスクが高い入所者らが発熱した際のPCR検査を専門に担う新組織の運用を始めた。迅速に陽性者を把握し、感染拡大を食い止める取り組みで全国でも珍しい。大阪では高齢者の死亡が急増し、累計死者数は全国最多。緊急事態宣言の発令以降も施設でのクラスター発生は続いており、対策の強化が急務になっている。新組織の名称は「スマホ検査センター」で、府有施設など12カ所に設置。高齢者施設の入所者や職員に発熱などの症状が出た場合、保健所を通さず検査を手配する。施設側はスマートフォンやパソコンから、センターの専用サイトに症状が出た入所者らの情報を登録することで検査を手軽に受けられるのが特徴だ。府が施設の感染状況を早期に確認できる上、業務が切迫する保健所の負担軽減にもつなげる。検査は無料で実施する。施設側は検査キットをセンターで受け取り、検体になる唾液を採取して提出。センターは各保健所と情報を共有しており、陽性が判明すれば保健所が調査に乗り出す仕組みだ。府内では感染拡大の「第3波」が始まった昨秋以降、高齢者施設でクラスターが92件発生(20日現在)。緊急事態宣言の発令後も13件相次いでいる。昨夏の「第2波」時の発生件数は20件で、4倍以上に跳ね上がっている。こうした感染状況を背景に、死者数が高齢者を中心に急増している。21日時点の累計死者数は796人で、東京都を上回って全国最多になっている。府が2020年10月10日~21年1月18日に確認された死者523人の感染経路を調べた結果、53%の279人は高齢者施設や医療機関のクラスターでの感染と推定。うち132人は施設の入所者らだった。厚生労働省の統計によると、府内の高齢者施設は約2万カ所で、東京都より約400カ所多く全国で最も多い。府は高齢者施設での感染拡大を封じ込めることで死者数や重症者数も減少傾向に転じる可能性があるとみており、吉村洋文知事はセンター稼働を発表した21日、「高齢者の命を守るために、手軽に入所者が検査を受けられる仕組みを強化する」と語った。ある特別養護老人ホームの施設長は「検査を簡単に受けられれば、施設としてもすぐに手を打てるようになり助かる」と話す。【上野宏人、石川将来、野口由紀】

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