臨床検査技師目指す学生に就学支援 2021年度から福島県、月5万円貸与


福島県は二〇二一(令和三)年度、臨床検査技師として県内での就職を目指す学生のため就学支援に乗り出す方針を固めた。学生一人当たり月額五万円を貸与し、貸与期間の一・五倍の期間を県内で勤務すると返済が免除される仕組み。臨床検査学科のある福島医大保健科学部の四月開設に合わせ、意欲のある学生が学びやすい環境を整え、県内の医療提供体制充実につなげる。臨床検査技師は医師の診断に必要な血液検査や病理検査、心電図検査などを担う国家資格。新型コロナウイルス感染の感染有無を調べるPCR検査に携わるなど医療現場で不可欠な職種だ。県は理学療法士、作業療法士、診療放射線技師、歯科衛生士を目指す学生向けの「修学資金貸与制度」の対象職種に新たに加える。財源は主に国庫支出金を活用する。二月定例県議会に関連条例の改正案を提出する。募集人数は五職種合わせて八十人程度。資格取得後に県内で就職する意思があれば、大学や専門学校など県外の養成施設で学ぶ学生も対象とする。臨床検査技師として県内での就職を目指す学生を県が支援する背景には、医療技術者の人材不足解消につなげたい狙いがある。県によると、これまで対象となっている四職種では修学資金を貸与された学生の県内就職率が75~85%となっている。県は二〇一九年度、県内の医療機関や訪問リハビリテーション事業所など計二千九百二十四施設を対象に医療技術者の需要について調査した。計十四職種について今後のニーズを聞いたところ、理学療法士、作業療法士、診療放射線技師、歯科衛生士に加え、臨床検査技師が他の九職種と比べて雇用したいと希望する施設が多かったという。県臨床検査技師会によると、同会に登録している臨床検査技師は二〇二〇年度、千百四十一人。人材が豊富だった団塊の世代の退職が続いている上、近年は医療機関だけでなく企業なども人材を求めており、人手は足りていないという。山寺幸雄会長(福島医大付属病院検査部検査技師長)は「修学資金貸与の対象となれば、若者に臨床検査技師の仕事を知ってもらえる好機にもなる」と期待している。県医療人材対策室は「新しい制度を活用してもらい、県内での人材定着につなげたい」としている。■4月開設の福医大保健科学部、制度の対象に貸与制度に臨床検査技師が追加されれば、四月開設の福島医大保健科学部の全四学科で取得可能な医療技術者の資格が制度の対象となる。県内で臨床検査技師の資格取得を目指すことができる学校は現在、県立総合衛生学院のみ。同校は二〇二〇(令和二)年度の入学生を最後に学生募集を停止しており、四月に開設される福島医大保健科学部に機能を引き継ぐ。学部長に就任予定の矢吹省司同大新医療系学部設置準備室長は「医療技術者を志す学生にとってありがたい話。県内の医療技術者のリーダーとなり得る人材を育成すべく、開設に向けしっかり準備していく」と話している。

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