消化器内視鏡検査の際に飛沫(ひまつ)によって新型コロナウイルスに感染するリスクを軽減しようと、香川大(高松市)とプラスチック加工会社「大倉工業」(香川県丸亀市)が新製品の開発を進めている。箱の形をした枠に透明のフィルムを取り付けた装置で、患者の上半身にかぶせて使用。フィルム内の空気を外に漏れにくくした上で、差し込み口から内視鏡を入れて検査する。フィルムを使い捨てにすることで、検査後の換気や消毒といった作業の省力化につながると見込まれ、来年春の発売を目標としている。検査時間3分の1に短縮8月24日に香川大で開かれた記者会見。プロジェクトマネジャーを務める医学部付属病院の小原英幹講師と、システムを発案した西山典子医員が開発中の試作品を用いて実演した。主に胃カメラの内視鏡検査での使用を想定。装置のフィルムには、上部に1カ所と側面に3カ所、用途に応じた差し込み口を設けた。上部の差し込み口からは、フィルム内の空気を吸引するチューブを挿入。気圧を下げ、空気が外に漏れるのを抑える。側面の差し込み口にはそれぞれ、患者の呼吸を助ける酸素チューブ▽たんを吸引するチューブ▽内視鏡-を挿入する。検査が終われば内視鏡を抜き、チューブを切断。飛沫が付着するチューブとフィルムを廃棄する。小原講師は「陰圧化によって飛沫の拡散を抑える。使い捨てのため消毒作業を省力化でき、円滑な検査につながる」と利点を挙げる。装置を導入することで現在は換気、消毒を含めて約30分かかる内視鏡検査が10分ほどで済むという。コロナ禍で検査が中止に内視鏡検査は、がんを早期に発見するための検診や救命治療の際に必要となる。ただ、患者の口から内視鏡を入れるため、むせたりせき込んだりすることによってウイルスを含む飛沫の室内への拡散が懸念され、医師や看護師にとっては感染リスクがある。新型コロナの感染拡大に伴い、多くの医療機関が内視鏡検査を中止、延期した。付属病院でも第1波の際は胃カメラの検診をストップ。小原講師は「早期発見の機会が失われる」と危惧したという。医師らはガウン、ゴーグル、マスク、手袋を着用するが検査後は1回ごとに換気や消毒が必要となる。円滑な検査に支障をきたしており、医療従事者と患者の双方が安心できる対策が求められていた。今年6月、デザインを手がける創造工学部の大場晴夫教授を交えて学内チームが発足。大学の産学連携・知的財産センターを介して同社が加わった。得意分野を生かす続きを読む