「うつぶせでコロナ重症化防ぐ」都立病院の看護師ら検証


新型コロナウイルスの患者にうつぶせになってもらい、重症化を防ぐ。東京都立駒込病院(文京区)のコロナ専用病棟で働く看護師らが、中等症患者での効果の検証を進め、医療関係者の注目を集めている。逼迫(ひっぱく)する重症病床の負荷を抑えることにつながる可能性がある。取り組むきっかけは、ある看護師の夜勤中の気づきだった。患者にうつぶせになってもらう治療法は「腹臥位(ふくがい)療法」と呼ばれ、医師でエッセイストの故・日野原重明さんらが推奨してきた。厚生労働省の新型コロナ患者対応の「診療の手引き」でも、肺炎が重症化した場合に「効果あり」とされている。ただ、人工呼吸器まではいらないが、酸素投与が必要な中等症患者への有効性については、広く認知されていなかった。駒込病院の看護師、大利(だいり)英昭さん(58)らは昨年4~10月、コロナ専用病棟で中等症患者23人に1日計7時間、腹臥位療法を実施。その結果、血液への酸素の取り込み具合をみる指標は全員が改善し、呼吸回数も記録のある18人中16人が減少した。23人中2人は人工呼吸器の使用を回避できたという。大利さんは、効果の背景に患者の肺の機能を生かす発想があると言う。新型コロナの肺炎では、背中側の肺がダメージを受けることが多く、仰向けだと酸素を十分に取り込めない。うつぶせになることで、より健康な腹側の肺に血液が流れて酸素の取り入れがよくなるという。これらの取り組みの成果を大利さんは昨年12月、第42回呼吸療法医学会学術集会で報告。「今後、重症化を予防する有効な治療法となる可能性がある」などとして、公募演題のうち「COVID―19(新型コロナ感染症)部門」で最優秀賞を受けた。自ら体を動かせない重症患者の腹臥位療法では、目の圧迫による失明を防いだり、カテーテルなどの管が抜けないように体位を変えられる熟練したスタッフが必要になる。一方、寝返りが打てる中等症患者ではその懸念も軽減されるという。腹臥位療法に取り組むきっかけは昨年4月、夜勤中に起きた出来事だった。大利さんの元に「患者さんの血中酸素飽和度が上がらない」と同僚が駆け寄ってきた。酸素飽和度とは、血液中で酸素を運んでいるヘモグロビンの比率のこと。健康なら100%に近く、数値が低ければ、酸素を体内に取り込む力が弱まっていることになる。コロナで肺炎を起こして入院中…

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