増える医師の訪問診療、医療崩壊を助ける手立てに


体調不良を訴える患者を医師が夜間や休日に訪問診療する民間サービスの需要が急増している。新型コロナウイルスの重症者や高齢患者を受け入れている病院の逼迫(ひっぱく)状況が背景にあり、通院が困難な市民から「新型コロナに感染した可能性がある」という相談内容も多い。自宅でのPCR検査の結果、実際、陽性反応が出た患者もおり、従事する現場の医師は感染防止対策に注意を払いつつ、対応に追われている。(石原颯)「自分も感染したかもしれない」-。1月27日夜。訪問型診療サービスを展開するベンチャー企業「コールドクター」(東京都渋谷区)のコールセンターに、咳や発熱などの症状を訴える同区内の20代男性から電話が入った。オペレーターが男性の職場に陽性者がいる、会食などはしていないなどの情報を聞き出し、同社と提携する病院に勤務する丸山浩司医師に緊急連絡。丸山医師は約50種類の薬が入っている薬箱や防護服などを用意して、同社が手配した車で男性の自宅に向かった。現場に到着すると、丸山医師は家の前で防護服に着替えた。マスクも医療用のものに付け替え、室内へ入った。男性への問診や聴診を行い、新型コロナに感染している可能性を念頭にPCR検査を実施し、血中の酸素飽和度も測定した。診察後、丸山医師は「呼吸状態は良かった。解熱鎮痛剤を渡し、様子を見てもらう形にしました」と語った。男性のPCR検査の検体は翌28日朝、検査機関に回され、29日夜には陰性だったと判明したという。このベンチャー企業は平成30年に創業された。IT関連の事業に詳しい中原毅社長と医師2人で立ち上げた。救急搬送に関する課題に注目し、「本当に必要な人に救急医療が届いていない」(中原社長)という思いから、ITを活用した軽症者向けの訪問往診サービスを開始。事業エリアを東京、神奈川の首都圏だけでなく、愛知県、福岡県、佐賀県の都市部など計5都県に広げた。

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