献血 ワクチン打つ前に 医師ら呼びかけ…接種後の制限で血液不足の恐れ


新型コロナウイルスのワクチン接種が本格化するのを前に、血液不足が懸念されている。接種後に献血が制限される期間について、コロナワクチンはまだ示されておらず、今後の接種スケジュールによっては献血できない人が同時に多数生じる恐れがあるためだ。医療関係者の間で接種前の献血を呼びかける動きが広がっている。(松永喜代文)■「知見がない」「コロナワクチン接種前に献血にいこう!」東邦大学医療センター大橋病院(東京都)の産婦人科医師(36)は3月下旬、こんな動画をユーチューブに投稿した。血液法施行規則は、予防接種後、一定期間は献血を制限している。制限期間はワクチンごとに国が定め、インフルエンザなどの不活化ワクチンは24時間、風疹などの弱毒生ワクチンは4週間、破傷風などの抗血清の投与は3か月間などと決められている。しかし、コロナワクチンについては「十分な知見が得られていない」として、まだ基準が示されていない。献血事業を行う日本赤十字社は2月、「国が基準を示すまで、献血はご遠慮いただく」と発表した。こうした中、医療関係者の間でSNSに接種前の献血を呼びかける投稿が相次いでいる。高橋さん自身も3月に1度目の接種を受ける前日に献血した。高橋さんは「産婦人科の現場でも大量に輸血することがあり、献血が不足すれば大変なことになる。接種前に行ってほしい」と話す。■時期が集中コロナワクチン接種後の献血については、接種が先行する国でも制限期間を設けていなかったり、数日~4週間と定めていたり、ばらつきがある。厚生労働省の研究班は2月、「接種後4週間」との見解をまとめた。しかし、同省は「より慎重に対応すべきだ」としており、基準が示されるのは5月にずれこむ恐れもあるという。基準が決まっても懸念は残る。コロナワクチンは、原則3週間あけて2回接種する必要があり、仮に制限期間が4週間と定められると、献血できない期間は最低7週間。国民が接種を受ける時期が集中すると、献血できない人も集中することになる。接種前に献血する人が殺到しても、血液製剤には有効期間があり、赤血球製剤で21日間、血小板製剤では4日間しかない。安定して献血が継続して行われることが重要で、2月に開かれた厚労省の薬事・食品衛生審議会の部会では、「制限期間が影響を及ぼす可能性は大いにある」との懸念が委員から示された。■感染防止へ予約をコロナ禍で、すでに献血に影響が出ている。大阪府赤十字血液センターによると、府内の400ミリ・リットル献血は緊急事態宣言が初めて発令された昨年4月、計画量に対し、85・3%しか確保できなかった。その後は90%台後半に回復したが、感染急拡大により、今月は19日時点で計画量の93%に落ち込んでいる。東京都でも計画量が集まらず、他県から融通するなどしているという。感染対策のため、企業や学校などにバスを派遣する集団献血の中止が増えており、大阪府では昨年4月からの1年間で522会場分が取りやめとなった。各地の献血会場では、検温や手指消毒などの感染対策を取っており、施設内での滞在時間を減らすため事前予約を推奨している。日本輸血・細胞治療学会の松下正理事長(名古屋大教授)は「血液不足が生じないよう日赤や国は広報を強化するべきで、自治体も、住民に送付する予防接種券などに献血を呼びかける案内を同封してもいいのではないか」と話している。

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