京都大学の井上治久教授らは量子科学技術研究開発機構と共同で、アルツハイマー型認知症を予防するワクチンを開発し、マウスの実験で効果を確かめた。神経細胞を傷めるたんぱく質を取り除く免疫反応を起こし、病気の悪化を抑える。企業との協力を模索し、実用化を目指す考えだ。アルツハイマー病は脳の神経細胞に異常たんぱく質が蓄積し、神経細胞が傷んで死滅することで発症すると考えられている。蓄積するたんぱく質の1つにタウたんぱく質が知られており、このたんぱく質を除去する抗体医薬を繰り返し投与する臨床試験が進んでいる。研究チームが開発したワクチン療法は、生体の免疫反応で抗体を作らせるため、繰り返し投与する必要がなく、費用も抑えられる可能性があるという。ウイルスの遺伝子を改変し、感染した細胞でタウたんぱく質を分泌するようにした。認知症のモデルマウスの鼻に1滴垂らすと、免疫の働きで抗体が作られ、脳に集まった。狭い通路を動き回る実験で、危険な場所と安全な場所を判断する認知機能の低下を抑える効果を確認した。研究チームは神経細胞から漏れ出したタウたんぱく質を抗体が除去し、病気の進行を抑えたと考えている。成果は25日、国際学術誌「npjワクチン」に発表した。