コロナ拡大で高齢者施設悲鳴 マスク不足・健康危惧・職員の負担増 神奈川県内


神奈川県の黒岩祐治知事が26日、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、県民に今週末は不要不急の外出を控えるよう要請するなど影響が広がる中、「感染弱者」の高齢者が生活する県内の施設にも深刻な影を落としている。施設側は外部からのウイルスの持ち込みを防ごうと、入居者への面会や外出の禁止、病院の受診を抑制するなどの対策に取り組む一方で、入居者の認知症が悪化する可能性や、基礎疾患を持つ高齢者の健康への影響も危惧されている。また、マスク不足や職員の負担も増大するなど、現場は対応の限界を訴えている。「入居者の9割が認知症。感染予防として、長期間家族と会う機会や外出を禁止すると、認知症の周辺症状が増幅するリスクも同時にある」。横浜市瀬谷区の特別養護老人ホーム「愛成苑」の施設長、平本千恵子さんは危機感をあらわにする。同施設では、ショートステイを含めて60~90代と100歳超を含めた約100人が利用し、職員約80人が対応している。入居者の9割に認知症があり、「全員、何かしら薬を必要としていて、基礎疾患がある」(施設関係者)という。高齢者は感染すると死亡や重症化のリスクが高いとされ、同施設はウイルス侵入の防御策を徹底している。2月25日から入居者への面会や外出を禁止。職員が付き添うなどして施設のバルコニーやウッドデッキの散歩、体操などで対応している。一方で、平本さんは「縛りの強い生活が長期化することで、ストレスもたまる。高齢者の体調への影響は誰も分からない。対策は総合的に考えないといけない」と話す。また、少しでも感染リスクを下げようと、医療機関への受診も抑制している。体調不良の入居者がいる場合は、医療機関に電話で相談し、薬の処方や受診時期を調整している。受診について、女性看護職員は「急病であればやむを得ない」とするが、「ウイルスをもらってきてしまう怖さがある」という。予防対策を徹底する一方で、「タイムリーに適切な医療を受けられないという悪影響もある。今後どうなるか…」と不安は尽きない。

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