大塚製薬・がんセンター、血液がんで遺伝子検査


国立がん研究センターと大塚製薬は、国内初となる血液がんを対象とする遺伝子パネル検査を開発した。がんの原因となる遺伝子を特定して治療するがんゲノム医療で使われる検査で、より効果の高い治療薬選択や治療後の症状を推測する予後予測に役立てられる。まず国内での診断機器としての承認取得や保険適用を目指し、2020年度内に有用性の検証を進める。パネルとは複数の遺伝子セットのことで、特にがんの発現に関与する遺伝子セットを調べて最適な治療薬を見つける治療方法をがんゲノム医療と呼ぶ。開発した遺伝子パネル検査では日本血液学会が出している「造血器腫瘍ゲノム検査ガイドライン」に掲載されている遺伝子を含む、合計454遺伝子を解析の対象とする。個々の遺伝子だけでなく、それらが組み合わさって機能する「融合遺伝子」も対象となり、DNAだけでなくRNAも調べる。がん遺伝子パネル検査は、肺がんや肝臓がんといった特定の組織や細胞にできる固形がんの検査で主に使われてきた手法。白血病などの血液がんで使えるものはこれまで国内になかった。固形がんと血液がんではがんの性質や治療法が異なるためだ。固形がんでは病変があるのは組織や細胞で位置が限定されるため、がんのステージがどこまで進んでいるのか、切除できるのかが予後の予測に関わるポイントとなる。それを踏まえて抗がん剤治療をすることになった場合は、より効果の高い薬を遺伝子パネル検査で探すことになる。一方の血液がんは全身性で切除はできないため、抗がん剤治療か、副作用などのリスクがより高い骨髄移植かに絞られる。また異常を起こしている遺伝子の種類によって予後が異なることも知られている。このため初期の段階で遺伝子パネル検査をすることで、最適な治療薬を見つけるだけでなく、骨髄移植をするかどうかやそのタイミングの判断にも役立つという。国立がん研究センター中央病院の伊豆津宏二血液腫瘍科長は「化学療法によってはいい状態で移植に臨めず、移植をしても治らないという患者が出てくることもあり得る。初発時に予後予測をして、どういう人が再発を起こしやすいかを見分けるのは治療選択の上で重要で、この遺伝子パネル検査が役に立つだろう」と話す。今後は国立がん研究センターと大塚製薬に加え、九州大学、京都大学、名古屋医療センターから成る共同研究コンソーシアムにおいて、開発した遺伝子パネル検査の性能を検証する。すでに集まっている200程度のサンプルを使い、20年度中に実施する。検証が終わり次第、大塚製薬が主体となって国内での製造販売承認を申請するという。また、国立がん研究センター内では並行して実臨床での有用性の検証も行う。今後1~2年をかけ100例程度で試験する予定だ。将来的に保険適用を目指しており、患者一人ひとりにあった個別化医療の実現に貢献する構えだ。(企業報道部 大崩貴之)

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