奈良県、全病院に病床確保要請…改正法基づき、全国初


奈良県は15日、新型コロナウイルス感染者の急増を受け、改正感染症法に基づき県内の全75病院に新型コロナ患者の受け入れ病床を確保するよう要請した。県はこれまで任意で協力を求めてきたが、確保が進まず病床使用率は72%(15日現在)に達している。同法では応じなければ勧告などができると定めており、より強い対応が必要と判断した。県によると同法に基づく要請は全国で初めて。要請は2月に改正された感染症法16条に基づくもので、知事は緊急時に医療機関に必要な協力を求め、正当な理由がなく応じない場合は協力するよう勧告できる。さらに従わなければ医療機関名の公表も可能だ。奈良県の最大確保病床は376床で、現在、269人が入院中。3月下旬からの感染の急拡大で、直近1週間の10万人当たりの新規感染者数は15日には39・9人となり、病床使用率とともに国の指標で感染状況が最も深刻な「ステージ4」の水準となっている。これまで県は主要な病院に病床確保を依頼してきたが、376床の97%にあたる366床を14の公立・公的病院が提供。民間病院は2病院10床とほとんど協力が得られていない。一方、隣接する大阪府では連日1000人超の新規感染者が確認され、県内でも感染者の高止まりが続いている。軽症者向けの宿泊療養ホテル(236室)の使用率も70%で、療養先や入院先の確保を待つ待機者は312人に達し、今後も入院者数の増加が予想される。県の鶴田真也・医療政策局長は「県としての姿勢を明確にするため、法律を根拠に要請した」と要請に踏み切った理由を説明した。これに対し病院側からは反発も予想される。県は政府に対する「まん延防止等重点措置」の適用要請を見送っており、県医師会の安東範明副会長は「病床を増やしても、感染拡大の要因を抑える方策をとらないと感染者は減らない」と述べた。県内の私立病院の幹部は「コロナ患者の受け入れには、人手も設備も必要となる。病床確保の重要性は理解するが、強要するのではなく、経営的な補償など丁寧に話を進めてほしい」と話した。

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