新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言が発令された期間に当たる今年4、5月、国民健康保険(国保)にかかる佐賀県内の診療数と医療費が、前年同期比を大幅に下回っていたことが、県国民健康保険団体連合会の統計で分かった。この2カ月間で、約16%に当たる約13万件の医・歯科の入院と外来受診が控えられ、医療費は前年同期を約7億5千万円下回った。特に外来数の落ち込みが激しく、医療関係団体は「外来診療が中心となる小児科や耳鼻咽喉科の受診控えが、とりわけ顕著」と分析している。連合会が、2020年6月診療分までの国保医療費などの状況をまとめた。退職者医療制度も含めた国保にかかる全体の入院、外来数は、国内の新型コロナウイルス感染が確認された同年1月から3月までは、前年同期比3~6%減で推移。全医療費は2月まで前年を上回っていた。しかし、政府が緊急事態宣言を全国に拡大した4月の入院・外来数は、医科で前年同月比12・19%減の30万8345件(前年35万1113件)だった。歯科は32・83%減の4万2181件(同6万2796件)と大幅に落ち込んだ。宣言が解除された5月分は、医科が前年同月比14・99%減の29万1591件(前年34万2978件)と30万件台を割り込んだ。歯科は23・24%減の4万6719件(同6万857件)だった。6月は医・歯科とも受診の揺れ戻しが見られたが、前年並みにまでは至っていない。医療費の4月分では、医科は前年比4・52%減に当たる2億3534万円分、歯科は10・58%減の4448万円分が、それぞれ減収となった。5月分では医科が7・81%減の4億1165万円分、歯科は16・13%減の6471万円分が落ち込んだ。6月分の医療費は、各医療機関が外来患者の診療内容を濃密にした結果、医・歯科とも前年を上回っている。県内の医・歯科医師で構成する佐賀県保険医協会の藤戸好典会長は、新型コロナ禍の受診控えについて「患者にとって大きなリスクを伴う。協会の調査では、糖尿病などの症状悪化、歯科治療の遅れ、健康診断の遅滞など報告が入っている」と説明した。医療費の減収で、地域の医療機関の存続にも影響する可能性がある。藤戸会長は、国による減収分の一定の補てんの必要性を指摘した上で「50%以上の減収になった診療所もあると聞いている。収入減の中で感染防止対策を強化しなければならず、地域の医療機関にとって大きな岐路に立たされている」と危機感を募らせている。(山内克也)