敦賀病院が賠償金400万円で和解


福井県敦賀市にある市立敦賀病院は8月25日、昨年5月に市内の20代女性に妊娠を調べる尿検査を行った際、使用期限が過ぎた試薬を使ったため早期に子宮外妊娠と確定できず、温存を希望していた卵管を切除する医療事故があったと発表した。賠償金400万円を支払うことで女性側と和解が成立し、9月市議会に関連議案を提出する。尿検査は、妊娠した際に分泌されるホルモンの量を試薬で測定する。女性は子宮外妊娠だった場合に薬剤投与で卵管を温存する治療を希望していたが、数値が低かったため早期に子宮外妊娠と確定されず、温存療法を受けられなかった。当初使っていた試薬がなくなり、新品に交換して女性を検査したところ極端に高い数値が出たことで問題を把握。試薬の製造元に問い合わせ、試薬を機器に投入して36日目以降は本来の値より低く測定される可能性があることが分かった。女性への最初の検査は投入後75日目だった。同病院が女性の尿で検証した結果、正常な試薬なら温存療法ができた可能性があった。試薬には機器投入後の使用期限が明記されていなかったが、製造元は5年ほど前に病院側に長期使用時の反応低下の可能性を電話連絡していたという。院内には製造元からの連絡記録が残っておらず、周知もされていなかった。同病院によると、女性は過去の子宮外妊娠でもう片方の卵管を切除しており、今回の事故で自然妊娠ができなくなった。院内で記者会見した太田肇病院長は「今回のような事態を招き深くおわび申し上げます。医療事故を重く受け止め、再発防止策を講じるとともに医療安全の取り組みを促進する」と謝罪した。同病院はこれまでに試薬を変更するともに、製造元などからの情報の文書化と共有の徹底を柱に再発防止策を実施。独立行政法人医薬品医療機器総合機構に試薬や製造元の記載不備を報告し、注意喚起を求める意見書を提出した。太田病院長は「業者、試薬に問題はあるが、業者と裁判を行い患者との和解に時間がかかるのは患者の不利益になると考えた。このような試薬を使用した病院の使用責任はある」と説明した。

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