コロナ禍避難所「入り口」が鍵 体調別の仕分け、手際よく適切に


台風など風水害の危険が高まる本格的な出水期を迎え、静岡県が今月策定した新型コロナウイルス感染症対策を盛り込んだ災害時の新しい避難所運営ガイドライン。ただ、実際の現場では災害の緊急度や規模、避難者の数によって混乱も予想され、弾力的な対応が必要になる。中でも施設の入り口でいかに手際よく避難者を適切に仕分けられるかが、大きな課題になりそうだ。

 ■県内市町 対応を模索
 6月末から7月にかけて激しい雨に見舞われた県内でも避難所を開設。各自治体は「3密」の回避を呼び掛けた。県の新たなガイドラインによると、事前問診で健康状態チェックシートを記入してもらい、「異常なし」と「体調不良、発熱あり」に振り分ける。同シートでは体温やせきの有無などを記載する。
 ガイドライン策定に向けて実際の訓練を経験した市町からは次々と課題が報告された。コロナまん延期に大型台風が接近したとの想定で避難所開設訓練を実施した藤枝市の担当者は「避難者に感染疑いがあるのか判別するのに時間がかかった。地元住民にお願いすることもあるので分かりやすい判断基準が必要」と指摘した。
 焼津市の担当者は「受付は屋外設置が望ましいとされるが、豪雨の中でできるのか」と疑問を呈した。一方、菊川市の担当者は「感染疑いの避難者がほかの避難者に分からないように、運営側の情報管理やプライバシー保護のあり方も検討が必要」と提言した。
 ただ、避難所の条件を厳しくし過ぎると、体調不良者の専用スペースの確保には限界があるのも現実だ。県はこれまで以上に避難所が必要となるため、指定避難所だけでなく、公民館や企業、ホテルなどにも受け入れてもらえるように市町に交渉を要請する。市町の中には観光バスを避難所として貸し出す検討を進める自治体もある。
 こうした状況に、県中部地区の自治体の担当者は「そもそも体調不良者には避難所に来ない判断をしてもらうのが一番」と指摘。その上で「自宅内の垂直避難や親戚宅などへの縁故避難を早期に検討してもらうにはどうすればいいのか」と知恵を絞る。
 県危機情報課の吉永尚史課長は「ハザードマップで浸水域などを確認して自宅で過ごせるならば、無理して避難所に集まらないという選択肢も考えて」と、指定避難所以外の活用を積極的に呼び掛けている。

 ■発熱、せき 可能な限り個室へ
 新型コロナウイルス感染症対策を盛り込んだ災害時の新たな避難所運営ガイドラインによると、発熱やせきが確認される人について、可能な限り個室とし、個室が確保できない場合は間仕切りで区切るなど、感染防止の工夫を行うと明記した。濃厚接触者は多数の人が訪れる避難所とは別の専用施設への避難が望ましいが、できない場合、体調不良者とは別の専用スペースを確保するとした。
 健康な人が滞在するスペースは1家族が1区画を使用し、広さは1人当たり約3平方メートル。国はテントを利用する場合、飛沫[ひまつ]感染を防ぐため、屋根がある方が良いが、熱中症対策に十分注意が必要と啓発した。

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