「人殺し」「火を付けるぞ」 コロナ院内感染の病院、差別や中傷被害 職員調査で浮き彫りに


新型コロナウイルスの院内感染が発生した堀川病院(京都市上京区)が5月、外部からの誹謗中傷やハラスメントについて職員にアンケートしたところ、回答者の約6割が何らかの被害を受けたと回答したことが、28日までに分かった。「飲食店から利用を拒否された」「別の職場を解雇された」など、医療従事者が受けたいわれなき差別や偏見の実態が改めて浮かぶ。アンケートは、5月18~23日、医師や看護師、薬剤師ら同病院の全職員約450人を対象に、無記名、自由記述で実施。回答した146人中、57%の84人が何らかの記述をした。
 最も多かったのが「家族が勤務先から出勤停止を命じられた」で10人だった。子どもの保育園関連も6人と多く「預かりを断られた」「登園自粛を求める雰囲気があり、休職せざるを得なかった」との回答があった。原因は定かではないが、「ダブルワーク先の職場から解雇された」と答えた職員も3人いた。
 さらに食事をした飲食店で従業員から「『うちの店に来ないでください。汚らわしい』と言われた」、病院に匿名で「『人殺し』『火を付けるぞ』と電話があった」など差別的言動や恐怖を感じる体験に遭った職員もいた。
 また一見すると感染防止のためとみられる対応も職員を傷つけた。「通院中のかかりつけ医から診療を断られた」「訪問看護先の利用者の家族から『来ないでほしい』と言われた」などで、「正しく恐れる」ことの難しさがうかがえた。
 同病院には「応援しています」「身を削っての献身的な看護に倒れないでと願うばかりです」といった電話やメールも多数寄せられた。山田正明事務長(61)は「数としては激励や感謝のメッセージが圧倒的に多く、職員の心の支えになったが、一部の誹謗中傷の言葉が非常にこたえた」と声を落とす。感染の第2波が懸念される中、「同じような経験をする病院が出ないことを願う」と話す。
 堀川病院では4月10日以降、院内で看護師や入院患者計30人が感染。最後の感染確認から4週間が経過した5月29日に「収束」を宣言した。6月1日から通常の医療態勢に戻っている。

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