福井赤十字病院(福井県福井市)など全国の総合病院などに勤務する複数の眼科医が、白内障の手術動画を患者や勤務先に無断で外部の医療機器メーカーに提供し、謝礼を受け取っていたことが5月16日分かった。福井赤十字病院は同日、約200例の動画が提供されたと明らかにし、職員就業規則に基づき厳正に処分を検討するとしている。手術動画は米医療機器メーカーの日本法人「スター・ジャパン」(本社千葉県)に提供されていた。福井赤十字病院によると、同病院の眼科医は学術・技術向上を目的に依頼を受け、同社製の眼内レンズを使った動画を2019年10月~12月、20年10月~12月に各100例提供した。眼科医は患者から動画提供の同意を得ておらず、院内規程に基づいた手続きもしていなかった。動画には術中の眼球と手術実施日時が記録されており、氏名や生年月日、住所など患者を特定できる情報は含まれていないという。同病院は16日、事実関係を公表し「患者さま、ご家族の皆さまには多大なご迷惑とご心配をおかけし、深くおわび申し上げます」と陳謝。今後、手術動画の管理やメーカーへの提供に関する実態調査などを行うとしている。「スター・ジャパン」広報は福井新聞の取材に、「関係当局へ報告を行うとともに、外部の法律事務所に委託して調査を実施している。事態を重く受け止め、日本の医療従事者、患者、その家族にご心配とご迷惑をおかけしていることをおわび申し上げる」とコメントした。関係者によると、動画を提供して現金を受け取った医師は10人以上に上り、謝礼の合計金額は1人当たり数万円から100万円ほどという。勤務先は福井赤十字病院のほか、JA広島総合病院(広島県)、済衆館病院(愛知県)など。業界団体の医療機器業公正取引協議会は、一部医師への謝礼は、景品表示法に基づく自主規制に反する自社製品の販売促進目的だった可能性があるとして調査を始めた。福井県内のある眼科医は「動画の共有は医学の進歩のために役立つ側面があり、単純に批判はできない。一方で金銭授受や患者の同意、病院内でのコンセンサスという点では、より慎重であるべきだったかもしれない」と話している。