静岡県立総合病院(静岡市葵区)の寺尾知可史免疫研究部長らの国際共同研究チームは25日、日本人のDNAに変異が起きた白血球が血中に増殖する現象が、加齢に伴ってほぼ避けられないことを明らかにしたと発表した。白血病発症に関して日本人特有のメカニズムの解明につながる発見もあり、基礎・臨床医学の進展への寄与が期待される。同日付の英科学雑誌「ネイチャー」に掲載された。
寺尾研究部長によると、日本最大級のヒト試料バンク「バイオバンク・ジャパン」に登録されたDNAを専用器具で解析した、18万人分のデータを利用。その結果、高齢者はDNAに変異が起きた白血球が血中に増殖する傾向が見られ、この状態になった人ほど死亡率が上昇していた。急性骨髄性白血病をはじめとする血液がんが、発症前の段階からDNAに変異が生じていることも突き止めた。
また、一連のDNAの変異は14番染色体の「TCR」と呼ばれる部分の一部を構成する領域で顕著だった。研究チームが英国人のデータも調べたところ、同国人で変異が目立ったのは「BCR」の部分だったため、TCR域での変異は日本人の特徴である可能性が高いという。
寺尾研究部長は「『今、自分の体の中で何が起きているか』を知ることにつながる。DNA検査の普及により対応策や健康管理の幅が広がれば」と話している。