福山大薬学部の松岡浩史講師(遺伝生化学)らのグループは、動脈硬化を抑えることが知られている特定のタンパク質が、血管内部に蓄積した脂肪を排出する仕組みを突き止めた。脂肪を分解する酵素の合成を促す役割を担っていた。動脈硬化を防ぐ薬の開発につながる成果として注目される。 動脈硬化は、血中から血管壁に入り込んだコレステロールを白血球の一種マクロファージが取り込み脂肪として蓄え肥大化。血管を詰まりやすくする。 グループは、マクロファージ内に存在し、動脈硬化の抑制に関わることが確認されているタンパク質「RORα」に着目。マクロファージ内でどのように作用しているかを詳しく調べた。 その結果、マクロファージのある特定の遺伝子と結合すると、信号を発信し、「NCEH1」という酵素の合成を促すことを確認。この酵素の働きで、マクロファージに蓄積された脂肪はコレステロールに分解、細胞外へ排出されていた。この遺伝子を除いて実験すると、酵素の合成は見られなかった。 さらにRORαに薬剤を投与して活性化させたところ、NCEH1の合成を促し、マクロファージ内に蓄積した脂肪を減らすことにも成功した。 松岡講師は「一連の反応を効率よく促す化合物を見つけ、創薬へつなげたい」と話した。 論文は英科学誌「BMC」電子版に掲載された。 血管疾患に詳しい金城学院大・北森一哉教授(臨床栄養学)の話 動脈硬化抑制の仕組みを明らかにし、非常に興味深い。動脈硬化は脳卒中や心筋梗塞など重篤な病気につながる。治療薬への応用に期待したい。