頭頸部のがんを狙い撃つ「光免疫療法」 福井大附属病院が県内初実施、「治療手だてなかった人の希望に」


福井大医学部附属病院(福井県永平寺町)は8月18日、喉や鼻、口などの頭頸部(とうけいぶ)のがんに対する新たな治療法「光免疫療法」を、県内の医療機関で初めて実施したと発表した。現時点で適用できるのは、抗がん剤や放射線など従来の治療後に再発し手術もできないケースなどに限られるが、担当の医師は「これまで治療の手だてがなかった人の希望になる」と話している。光免疫療法は、がん細胞の表面に結合する抗体と、光に反応する色素を組み合わせた薬剤を点滴で投与し、その後、レーザー光を体の表面からか、針を刺して腫瘍の内部から照射する。色素の化学反応により、がん細胞だけを破壊する仕組み。治療1回当たりの照射時間は腫瘍の大きさによって変わり、短い場合は数分で終わる。⇒1歳半でがん全身転移の息子、病院で「おうちに帰ろ」2020年に他の治療法がない頭頸部がんについて公的医療保険の対象となった。一方、腫瘍の位置が目や大動脈に近い場合などは受けられないほか、のどの腫れや光過敏症などの合併症が起こることがある。福井大医学部附属病院は17日に、顎の下に11センチほどの腫瘍がある60代男性に対して治療を行い、レーザー光を約50分照射した。18日に福井大松岡キャンパス(永平寺町)で記者会見した同大医学部耳鼻咽喉科頭頸部外科の成田憲彦准教授(51)によると、照射を終えた時点で腫瘍の大きさは1センチ以上小さくなったという。成田准教授は「(これまでの症例で)完治するのは1、2割だが、これまで治療できなかったことを考えると画期的。他の部位のがんでも研究が進んでいて、伸びしろがある」と期待した。光免疫療法は米国立がん研究所の小林久隆医師が考案し、楽天メディカル(東京)が薬剤を販売。県内では福井大医学部附属病院でのみ受けられる。

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