新型コロナの妊婦への影響は… 症例少なく 学会「身近にできる予防」を


「新型コロナウイルスについての妊婦への情報発信が少ない」。国民民主党の矢田稚子(わかこ)参院議員が26日の参院予算委員会でこう指摘し、政府に対応を求めた。厚生労働省によると、妊婦が感染したら重症化しやすいなどの報告はないが、まだ、妊婦が罹患(りかん)した症例は少ない。「一般的に妊婦の肺炎は本人の重症化や胎児に影響する恐れもある」(日本産婦人科感染症学会)ため、同学会などはこまめに手洗いすることや人混みを避けることなど「身近にできる予防」の徹底を呼びかけている。矢田氏は予算委で、罹患した場合の妊婦や胎児への影響を質問。自見英子(はなこ)厚労政務官は「現時点では、妊産婦の重症化や死亡率が特に高いという報告はない」と述べた。胎児への影響も「妊娠初期・中期に流産・早産をきたす可能性は高くないと報告されている」と強調した。これに対し、矢田氏は、中国で死産や新生児が低酸素症だった事例があるとの報道があったことなどを紹介。「2009年の新型インフルエンザ対策の時には、政府としてパンフレット等を出して啓発を行ったのに、今回は全くしていない」と批判し対応を迫ったが、自見氏は「各国の取り組みも十分に参考にしながら取り組みを進めたい」と述べるにとどめた。日本産婦人科感染症学会のホームページ(http://jsidog.kenkyuukai.jp)にある資料(3月17日更新)では、妊婦が感染した場合も妊娠初期・中期に流産・早産の可能性は「高くない」としているほか、胎児奇形の報告も現時点でないという。また、重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)よりも死亡率が低いなどとして「過剰な心配は不要」と記載している。政府は、妊婦が新型コロナウイルスの電話相談窓口「帰国者・接触者相談センター」に相談する目安について「風邪の症状や37・5度以上の発熱が2日以上続く場合」としている。一般の人は「4日以上」。加藤勝信厚労相は予算委で「科学的知見はないが、念のため、重症化しやすい高齢者等と同様の2日以上としている。しっかり周知したい」と説明した。ただ、一般的に妊婦の肺炎は、横隔膜が持ち上がるために換気が抑制され、うっ血しやすいことから重症化する可能性があるという。SARS、MERSの流行時には、妊娠初期の感染で流産が、中後期の感染で早産や胎児発育障害があったとの報告もあるため、日本産婦人科感染症学会は「妊婦は感染しないようにするのが最も重要だ」と強調する。現在はまだ、「周産期および新生児に関する情報は非常に限られており、引き続き知見の積み重ねが必要」(自見氏)との段階だ。妊婦や胎児への影響に対する不安は払拭(ふっしょく)できておらず、「妊婦へのストレスが増えている」(矢田氏)。衛藤晟一・少子化担当相は「妊婦はリスクが高くなるので、妊婦に対する配慮が必要だ」と述べ、厚労省に対応を検討するよう要望する考えを示した。日本産婦人科感染症学会では「妊娠中ならびに妊娠を希望される方へ」として、新型コロナウイルス感染症についての情報をまとめている。日本産科婦人科学会は「不確かな情報に振り回されず、感染症学会などが発信する情報を参考にしてほしい」と話している。【野原大輔】

関連記事

ページ上部へ戻る