【独自】「コロナ死」定義 自治体に差…感染ならすべて集計/別の死因 診断で除外


新型コロナウイルス感染症の「死者」の定義が、自治体ごとに異なることが、読売新聞の全国調査で分かった。感染者が亡くなった場合、多くの自治体がそのまま「死者」として集計しているが、一部では死因が別にあると判断したケースを除外。埼玉県では10人以上を除外したほか、県と市で判断が分かれた地域もある。専門家は「定義がバラバラでは比較や分析ができない。国が統一基準を示すべきだ」と指摘している。(社会部 安田龍郎、さいたま支局 田野口遼)■全員精査 厳しく読売新聞は5月下旬~6月上旬、47都道府県と、県などとは別に独自に感染者集計を発表している66市の計113自治体に対し、集計方法などを取材した。これまでに感染者の死亡を発表したのは62自治体。このうち44自治体は、死因に関係なくすべて「死者」として集計していた。その理由として、「高齢者は基礎疾患のある人が多く、ウイルスが直接の死因になったのかどうか行政として判断するのは難しい」(東京都)、「全員の死因を精査できるとは限らない」(千葉県)――などが挙がった。感染者1人が亡くなった青森県は「医師は死因を老衰などと判断した。感染が直接の死因ではないが、県としては陽性者の死亡を『死者』として発表している」と説明している。■「区別は必要」一方、13自治体は、「医師らが新型コロナ以外の原因で亡くなったと判断すれば、感染者であっても死者には含めない」という考え方で、埼玉県と横浜市、福岡県ではすでに除外事例があった。埼玉県は12日時点で13人の感染者について、「死因はウイルスとは別にある」として新型コロナの死者から除外。13人はがんなどの死因が考えられるといい、県の担当者は「ウイルスの致死率にもかかわるので、コロナなのか、そうでないのかを医学的に区別するのは当然だ」と話す。横浜市でも、これまでに死亡した感染者1人について、医師の診断により死因が別にあるとして、死者から除外したという。■県と市でズレ福岡県では、県と北九州市で死者の定義が異なる事態となっている。北九州市では、感染者が亡くなればすべて「死者」として計上している。これに対し、県は、医師の資格を持つ県職員らが、主治医らへの聞き取り内容を精査して「コロナか否か」を判断。この結果、これまでに4人の感染者について、北九州市は「死者」として計上し、県は除外するというズレが生じている。また、62自治体のうち残る5自治体は「定義は決めていないが、今のところコロナ以外の死因は考えられず、死者に含めた」などとしている。厚生労働省国際課によると、世界保健機関(WHO)から死者の定義は示されていないといい、同省も定義を示していない。だが、複数の自治体からは「国が統一的な定義を示してほしい」との声が上がっている。厚労省は12日現在、「新型コロナウイルス感染症の死亡者」を922人と発表している。都道府県のホームページ上の公表数を積み上げたといい、この死者数をWHOに報告している。一方で同省は、新型コロナによる死者だけでなく国内のすべての死亡例を取りまとめる「人口動態統計」を毎年公表している。同統計は医師による死亡診断書を精査して死因が分類されるため、新型コロナの死者は現在の公表数よりも少なくなるとみられる。国として二つの「死者数」を示すことになるが、同省結核感染症課の担当者は「現在の公表数についての判断は自治体に任せており、定義が異なっていることは承知している。現在の数字は速報値、目安として捉えてもらいたい。統一された基準でのウイルスによる死者数は、人口動態統計で示される」と話している。大阪市立大の新谷歩教授(医療統計)は「死者数は世界的な関心事項で、『自治体によって異なる』では、他国に説明がつかない。国際間や都道府県間での感染状況を比較するためにも、死者の定義を国が統一し、明示すべきだ」と指摘する。患者の治療に当たっている国立国際医療研究センター(東京)の大曲貴夫・国際感染症センター長も「医療従事者にとって、死者数は医療が適切に行われているかどうかを見定める指標の一つ。第2波に備える意味でも、ぜひ定義を統一してほしい」と求めた上で、「迅速性が重要なので、『陽性判明から4週間以内に死亡したケース』など、人の判断を挟まない方法が良いのではないか」と提案している。

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