てんかん性脳症、発症の仕組み解明 九州大助教ら治療薬の研究も検討


 早期乳児てんかん性脳症(EIEE)の一部について、その発症のメカニズムを九州大生体防御医学研究所の土本大介助教らの研究グループがマウスを使って明らかにした。今後は治療薬の研究も検討していくという。研究成果は11月、米科学誌に掲載された。

 早期乳児てんかん性脳症は、抗てんかん薬でのコントロールが難しい難治性のてんかんで、てんかん発作が多いのが特徴。生後数日から半年ほどで発症し、知的障害を伴う場合が多い。

 遺伝子の変異が原因とされるもののうちの一つ「EIEE35」の発症メカニズムを突き止めた。イノシン三リン酸(ITP)という分子を分解する酵素に関わる遺伝子変異が原因であることは以前から分かっていたが、どのように発作につながるのか不明だった。

 土本助教は、遺伝子を人為的に変異させたマウスを使った実験で、ITPが分解されずに蓄積し、膜電位という細胞膜の内と外の電位差が小さくなることを発見。神経細胞の細胞膜が興奮しやすい状態になり、それが脳の興奮にもつながり、てんかん発作が起こる仕組みを明らかにした。

 患者が少ないため新薬を開発するにはハードルが高い。今後は、既存薬の中から有効な薬を見つける「ドラッグリポジショニング」に取り組むことも検討しているという。

 難治性てんかんの診療に当たる九州大病院小児科の酒井康成医師は「EIEE35だけでなく、他の遺伝子変異が原因とされるてんかんの発症メカニズムの解明にもつながることが期待される」と評価している。

 (斉藤幸奈)

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