高齢者が命を落とす原因にもなる誤嚥(ごえん)性肺炎を防ぐのに、飲食物にとろみをつけるのが有効とされる。とろみ付きのお茶やコーヒーの自動販売機が開発され、県内の病院にも設置されている。人手不足がちの現場で職員の負担軽減にもつながっている。飲み物は固形物よりも、のどを通り過ぎるのが早いため、のみ込む機能が衰えた高齢者の場合、誤って気管に入り肺炎を起こしかねない。このような誤嚥性肺炎は日本人の死因で6番目に多い。対策の一つが飲み物にとろみを付けること。のどを通り過ぎるのがゆっくりになり気管に入りにくくなる。自販機を管理運営するアペックス(愛知県大府市)と栄養補助食品メーカーのニュートリー(三重県四日市市)が共同開発した。自販機のほかにサーバー型などがある。アペックスによると自販機とサーバー型は全国で約200台ずつ設置され、そのうち福岡県内にはそれぞれ3台が導入されているという。福岡県大野城市の誠愛リハビリテーション病院(206床)は昨年秋にとろみ付き飲料の自販機とサーバーを1台ずつ導入した。誤嚥性肺炎の予防、職員の負担軽減などが目的だ。食事や水分補給時に出すお茶はサーバーで作る。とろみは「薄い」と「中間」の2種類に設定。2リットルが2分でできる。導入前は看護師らがとろみ材を麦茶に混ぜて1人分ずつ手作りしていた。看護師の白楽志津子さん(60)は「手早くかき混ぜないとだまが出来て、飲みにくくなっていた」。サーバーの設置で作る手間が省けたうえ、とろみが均等で飲みやすくなり、残す人が減ったという。食堂兼デイルームに設置された自販機には、コーヒー4種類のほかココア、抹茶ラテ、緑茶などがあり、それぞれ冷・温が選べる。とろみは「濃い」「中間」「薄い」の3種類から選べ、「無し」もできる。誠愛リハビリテーション病院総院長の井林雪郎さんは「患者のQOL(生活の質)の向上にもつながる。お酒が好きな人向けにノンアルコール飲料でもとろみ付きができれば面白い」と話す。(宮田富士男)