インフル予防も 障害者の口腔ケアボランティア10年の成果


大阪府池田市を拠点に障害者の口腔ケアに取り組むボランティアグループ「健口支援の会『あっはっ歯~』」の活動が、10年目に入った。メンバーは歯科医と歯科衛生士。代表の歯科衛生士、早矢仕(はやし)啓子さん(60)は「口の健康が大切なのは健常者も障害者も同じ。万病の予防になる」と話す。活動の主な舞台は、同市にある産経新聞厚生文化事業団の障害者支援施設「三恵園」(通称・池田三恵園)など2施設。グループ結成のきっかけは、同市歯科医師会の理事で地域医療に取り組む歯科医、和泉良大郎さん(52)が障害者家族を対象にした講演活動を始めたことだった。講演は歯磨き指導など実践タイム付きで、その担当が早矢仕さん。早矢仕さんを代表、和泉さんを副代表として平成23年、市の公益活動団体に登録し、さっそくメンバー6人で活動を開始した。当時はまだ、「口腔ケア」や「予防歯科」という言葉が一般的でなかったという。その年、たまたま講演を聴いた事業団職員の依頼で事業団施設での口腔ケアが実現。以来、和泉さんはスケジュールの都合がつく歯科衛生士3人とともに月2回、池田三恵園を訪れるようになった。この春からは、新型コロナウイルス感染防止のためマスクの上にフェイスシールドをつけてのケア作業。不自由さのある作業環境でも、施設利用者の口の中をすみずみまでチェックし歯ブラシで磨いていく。その間、利用者たちはおとなしく磨いてもらっている。「今でこそじっとしてくれているけど、はじめはこうはいかなかった」と和泉さん。怖がっていすに座ってくれないどころか、部屋に入ることさえできない利用者も多かった。座ってくれたらすかさず、3人がかりで1人をケアするのが基本スタイルだった。和泉さんは自閉スペクトラム症の娘を持つ。その娘を育てた経験から「時間をかければ必ずできる」と衛生士らに声をかけ、辛抱強く取り組んだ。すると2、3年後にはすべての利用者がメンバーを受け入れ、今では一対一でケアできるようになった。施設職員もグループの指導を受け、毎食後、利用者たちを歯磨き。定期的なケアとの相乗効果で、虫歯が減り、口臭がなくなっただけでなく、施設内でかぜやインフルエンザのクラスターが発生しなくなった。まさに万病の予防につながっており、早矢仕さんも「職員さんの日ごろの努力の成果ともいえる。ボランティアは私たちのスキルアップにもなり、ウインウインの関係」と評価。これからもケアを続けていきたいとしている。

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