東京近いのに権限弱い松戸市の苦慮 「危機意識で県とギャップ」  千葉


新型コロナウイルスの感染者数が27日現在、千葉県内で2番目に多い松戸市が、政令指定都市や中核市のような強い権限を持たないため、対応に苦慮している。市内にある保健所は県が運営しており、集団感染が発生しても県からの連絡を待つしかない状態が続いている。市は17億円規模の独自の対策に乗り出した。【奥村隆】中核市の船橋市と柏市は、政令市の千葉市と同様、自前の保健所を設置しており、これまでも「帰国者・接触者相談センター」に寄せられた相談内容や市内の感染状況をリアムタイムで把握できた。一方、人口約50万人の松戸は全国最大の一般市。多くの感染者を抱えているが、感染者がいない市町村と同じ立場だ。松戸市内の介護施設で集団感染が起き、21日に女性入所者3人が死亡した際、施設側と対応を協議したのは県だった。24日に船橋市とともに感染者が初めて100人を突破したことが判明したが、県が情報を取りまとめた後、市に連絡があった。市は公表してこなかったが、11日から県内初のドライブスルー方式のPCR検査(遺伝子検査)を松戸市内の医療機関で始めている。車に乗ったまま検体採取できるため、検査不足解消の切り札と言われている方式だ。ヤマト運輸の市内の支店で集団感染が発生し、検査を必要とする患者が急増したことが背景にある。市民から新方式導入の要望もあり、10日間で130人が検査を受けた。しかし、対象は県の松戸保健所から依頼された人で、市の判断で検査できないことが非公表の背景にあった。本郷谷健次市長は27日の定例記者会見で、市の取り組みをまとめて発表し「東京に非常に近い松戸は、人口あたりの感染者数も東京に近い。県は房総半島全域を対象としており、危機意識にギャップがある」と述べた。市長と保健所長、松戸医師会長の3人で定期的に情報交換し、危機感を共有できるよう努力しているという。27日現在の市内の感染者は104人。市立総合医療センターで35人までの入院が可能だが、今後の感染拡大に備え、院内の1フロアを全面的に対応できるようにし、約80床への増床を準備している。一方、医療従事者が家族への感染リスクを避けられるように、民泊物件9部屋を市が借り上げ、47人が無料宿泊できるようにした。また、小中学校にあるパソコン2600台を、自宅にネット環境がない児童・生徒に無償で貸し出すことを決めた。休校が長引くことを想定し、6月末までに順次貸与し、インターネットに接続できるようにする。

関連記事

ページ上部へ戻る