若年性認知症実態調査/埼玉県 支援制度、5割が「申請せず」 周知に課題


埼玉県は3月、若年性認知症の生活実態把握を目的に実施した「若年性認知症実態調査」(以下・調査)の結果を公表した。今回が初実施となったこの調査では、若年性認知症発症後に『自ら退職した』『解雇された』『自営業を廃業した』を合わせると約7割におよぶことが判明。また、回答した人の45.5%が精神障害者保健福祉手帳を申請していないことが明らかになり、支援制度の周知が今後の課題となった。この調査は、県が2019年より進めている若年性認知症の支援策について、今後検討のための基礎資料として利用するために行ったもの。19年7月~12月にかけて実施され、調査方法は郵送によるアンケート方式。1次調査は県内の医療機関や介護サービス事業所など5182事業所を対象に、若年性認知症の該当者の有無を調査した。2次調査では1次調査で把握された認定者985名、またはその家族や事業所の担当者を対象に、就労・生活の状況や医療・介護の状況などの回答を求めた。今回の調査で認定者の45.5%が、精神障害者保健福祉手帳を申請していないことが判明。申請していない理由の項目では認定者の61%が「制度について知らない」と回答した。若年性認知症は65歳以下で発症する認知症を指す。若年性と高齢者の発症する認知症の間で病理的な違いはなく、通常の認知症の診断基準が用いられる。認知症と診断されると、精神障害者保健福祉手帳の対象になるため手帳を取得でき、障害者雇用枠での採用や、公共料金の割引、税金の控除・減免などが受けられる。そのため県は積極的な申請を勧めている。この結果について埼玉県福祉部地域包括ケア課認知症・虐待防止担当の松本信彦主幹は、「想像より支援制度が周知されていない現状に驚いています。厳しい現状を改めて認識しました」と語る。必要な支援を行き渡らせる方法として、県では17年より「若年性認知症支援コーディネーター(以下・コーディネーター)」を配置している。コーディネーターは、利用できる社会制度・サービスの情報を提供するなど、ワンストップ窓口としての機能を持つ。しかし、調査ではコーディネーターについて「知らなかった」「知っていたが相談しなかった」という回答が77.9%にのぼっており、その周知が今後の課題となった。

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