お年寄り、今こそ家でお手軽筋トレ 持病の悪化防ごう


新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、不要不急の外出を控えるよう求められている。しかし、家に閉じこもる生活が続くと、筋肉が減り、関節は硬くなり、様々な不調がおきて気分もめいる。これまで活動的だったお年寄りならなおさらだ。自粛生活を少しでも快適に過ごすにはどうしたらいいのか。「長いトンネルに入ったような先の見えない状態。『外に出るな』『距離をあけて』と諭され、自粛生活が何カ月も続くと、お年寄りのフレイル(虚弱)が進むのではないかと心配だ」。日本老年医学会理事の飯島勝矢・東京大教授(老年医学)はそう話す。学会は3月、新型コロナ感染症について、高齢者として気をつけたいポイント(https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/citizen/coronavirus.html)をまとめた。それによると、ずっと家に閉じこもり、一日中テレビを見ていたり、ボーッとしていたりして、食事もたまに抜かしてしまう、誰かと話すことも少なくなった、といった生活が毎日続くと、フレイルになりやすくなる。フレイルが進むと、体の回復力や抵抗力が低下し、疲れやすさが改善しにくくなり、感染症も重症化しやすくなる。どうしたらいいのか。飯島さんは「動かない時間を減らすことが大切。家の中でもできることはある。立ったり座ったり、足踏みをしたり、ラジオ体操をしたりするとよい。人混みを避けての散歩もおすすめです」と話す。食事にも注意が必要だ。1日3食、バランスの良い食事をして栄養をとることは免疫力の維持にもつながる。筋肉のもとになるたんぱく質は、体重60キロの人なら計60グラム以上、70キロの人なら計70グラム以上を毎日、いろんな食材からとってほしいという。年をとると、たんぱく質が筋肉になりにくい。意識して食べることが重要だ。口周りの筋肉も加齢とともに衰え、滑舌が悪くなったり、食べこぼしが増えたりする。かめないからと軟らかいものばかり食べていると、さらにかめなくなる。少し歯ごたえのある食材を選ぶとよいという。地域の集まりやサークル活動も中止になり、一人暮らしの人などは誰とも話さず、一日が過ぎていくことも多い。意識して会話することで、口の力や認知機能の衰え防止になる。飯島さんは「今こそ家族や友人、近所の人たちで支え合ってください。高齢の親や祖父母に『動こう、話そう』と促すとよいでしょう。電話をして、いつもより少し長く話をすると、距離感が縮まるのではないでしょうか」と助言する。健康政策が専門の久野譜也・筑波大教授は「外出を控えた高齢者の高血圧や糖尿病といった持病が、悪化し始めているという報告が増えている。今こそ、筋肉トレーニングや有酸素運動をしてほしい」と話す。筋肉量の低下は足腰から進みやすい。つまずいて転びそうになると運動や歩くのがおっくうになり、筋肉量が減って悪循環に陥るという。一方で高齢になっても筋トレの効果はみられることがこれまでの研究からわかっている。筋肉にはコルセットのように正しい姿勢を保つ機能もある。正しい筋トレをすると、ひざの痛みや腰痛の改善につながる。久野さんが副理事長を務める、スマートウエルネスコミュニティ協議会は、自宅でできる筋トレをホームページ(https://www.swc-kyogikai.jp/)で紹介している。週に3日以上、1回2、3種目の筋トレがおすすめという。下半身を鍛えるにはスクワットがよい。股関節を意識して4秒間かけて腰を落とし、4秒間かけて元に戻す。ゆっくり8秒、声に出してカウントしよう。10回1セットで、ひざは、つま先より前に出ないように注意しよう。足腰が弱い人は、いすの背もたれに手をかけて行う。股関節周りの大腰筋や腹筋を鍛えるには、もも上げがおすすめだ。背筋を伸ばしていすに浅く座り、両手でいすの座面の前側を軽く押さえる。両足を肩幅くらいに開き、ひざに力を入れて、4秒間かけてももを胸に近づけ、上体をかがめる。4秒間かけて元に戻す。左右それぞれ10回ずつ繰り返す。ただし、体調が悪い場合は無理をせず、痛みがあれば中止し、かかりつけ医に相談してほしいという。ウォーキングやジョギングといった、有酸素運動にも、血流をよくする▽疲れにくい体にする▽動脈硬化を防ぐ▽脂肪を減らす、など様々な効果がある。久野さんは「運動を続けると、多くの酸素を供給するため毛細血管が増える。やめると毛細血管は消滅するので、続けることが何よりも大事。運動をすると、気持ちがいいと脳が感じるホルモンも分泌され、抑うつ軽減にもなる」と話す。(編集委員・辻外記子)

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