要介護1、2の自治体移行を厚労省が3年先送り サービス低下を懸念する反対論に配慮


介護保険制度の2024年度からの見直しを巡り、厚生労働省は19日、要介護1、2の訪問・通所介護を保険制度の給付から外し、市区町村の事業に移行する案について、今回は見送る報告書案を明らかにした。サービスが低下しかねないとの反対論が根強いためで、社会保障審議会(厚労相の諮問機関)も了承した。ただ、次の見直し時期となる3年後の27年度に向けた議論で結論を出すとの方針も示し、懸念の声は消えていない。(井上峻輔)検討されていたのは、要介護1、2の一部のサービスを、市区町村が担う「介護予防・日常生活支援総合事業」(総合事業)に移行する案。総合事業は、市区町村がサービスの基準や報酬を独自に決めることができ、専門資格のないボランティアらも担い手になる。要介護は症状の軽い順に1〜5に分かれ、1、2は日常生活を送る上で部分的な介護が必要な状態。審議会の議論では「専門的なサービスを、より重度の3以上に重点化する」「保険給付の増加を抑制する」など効率化や財政を重視した移行への賛成論と、「1、2の段階で重度化を防止するには専門職の関わりが不可欠」「地域の受け皿が整っていない」などの反対論が対立してきた。厚労省は「賛否両論があり議論が深まらなかった」(担当者)として見送りを決めた。移行案は3年前の見直しの際も検討されたが、結論が先送りされた経緯がある。厚労省は今回の報告書案に「(次の見直しで)結論を出すことが適当」と明記。次回はより踏み込んだ議論を行う方針だ。審議会委員の1人で、移行に反対してきた「認知症の人と家族の会」の花俣ふみ代さんは見送りを評価しつつも「再び審議のに載るということなので、介護を必要とする人や家族にとって、気が気でない状況が続くことに変わりはない」と警戒する。こうした検討を厚労省が求めてきたのは、急激な高齢化の中で介護保険制度を持続させるため「給付と負担」のバランスを見直す必要があるとの立場からだ。10月に要介護1、2の移行案を含め、全体で七つの論点を審議会に示した。だが、今回の報告書案では一つも結論を示さなかった。いずれも利用者に大きな影響が出る負担増ばかりだからだ。一部の利用者の自己負担割合を1割から2割に引き上げる案や、65歳以上の高所得者の保険料を引き上げる案は、24年度からの導入を目指しつつも、結論を来夏まで先送りした。介護は、総じて医療よりも利用が長期間になるのが特徴で、負担増の影響は大きい。厚労省幹部は「これまでもかなり見直しをやってきたので、難しい論点しか残っていない。相当な痛手を一定の人に求める割に、財源効果はそんなに大きくないので決めづらい」と本音を漏らす。議論の加速を求める委員からは「何一つ見直しが進んでいない。手遅れにならないうちに、より踏み込んだ見直しが必要」と厳しい意見も出ている。来夏以降、次々と「結論」が出され、負担増の項目が一気に利用料や保険料にのしかかってくる恐れもある。【関連記事】

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