施設管理者が知っておきたい感染症の知識/安全な介護 山田滋氏


新型コロナウイルスの脅威が各地で叫ばれている。それにおびえる前に、まずは基礎知識を学び正しい感染予防を実施する必要がある。安全な介護の山田滋代表の特別寄稿。新型コロナウイルス感染症の対応で、ある法人から管理者向けの感染症対策の研修を依頼されました。インフルエンザやノロウイルスの対策を現場で指揮している管理者ですから、実践的な知識は持っていますが、基本的な感染症の知識が欠けているように思いましたので、次のような質問をしてみました。「新型コロナウイルスに感染していて発症していない人が触れたつり革に、私が触ったとします。つり革に触れたその手を洗わずにサンドイッチを食べたら、感染する確率は高いでしょうか?」と。すると、ほぼ全ての管理者が「感染する確率が高い」と答えました。「そりゃ必ず感染するよ、ウイルスが体内に入ったのだから」と言う人がほとんどでした。しかし、正解はNO、感染する確率は極めて低いのです。まず、感染しても発症していない人は体外に排出するウイルスはほぼゼロですから、つり革にウイルスが付着することはほとんどありません。では、発症している人が触れたつり革の場合はどうでしょう?やはりほとんど感染しないでしょう。発症している人でもウイルスが手に染み出てくる訳ではありませんから、必ず手にウイルスが付いている訳ではありません。もちろん、咳やクシャミを手で押さえたあとにつり革につかまればウイルスが付着しますが、新型コロナウイルスは外界では6~12時間程度で死滅するでしょうから、手を介して感染する確率は低いのです(ノロウイルスは外界で1カ月も生存できる)。では、つり革に”体外に吐き出されたばかりの活きがいいウイルス”が付着していて、これに触れた手を洗わないでサンドイッチを食べたらどうなるでしょう?やはりほとんど感染しないと思います。新型コロナウイルス感染症は上気道炎と下気道炎なので、気道(鼻腔から気管・肺まで)の粘膜から体内に侵入します。サンドイッチに付着して口に入ったウイルスは、口腔内や胃に入って確実に死滅し、気道から侵入する確率は極めて低いのです(ノロウイルスは口から入り消化器官から体内に侵入する)。ただし、ウイルスが付着した指で鼻をほじるとかなり高い確率で感染すると思います。肺炎球菌による肺炎の感染経路の第1位が鼻ほじりだという、まじめな研究論文までありますから。インフルエンザウイルスもコロナウイルスも気道に届かなければ感染はしませんから、ここでブロックするのも有効な方法なのです。マスクをすると上気道の粘膜が乾燥せず湿潤な状態になり、ウイルスをブロックする効果が高いと言われています。ちなみに、私は帰宅時にうがいと洗顔をして、オデコから目鼻口の周りを石鹸で洗います(鼻の入口の内側も)。顔や目に付着したウイルスが鼻に入る確率は高いですから。

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