自宅で採取した尿を企業に送ることで、自宅にいながら15種類のがんのリスクを検査できる有料サービスが福岡県内で始まった。九州大学発のバイオベンチャーが手がける事業で、外出自粛が必要なコロナ禍でもがん検査を受けやすくするのが狙いだ。検査方法は、九大助教だった広津崇亮(たかあき)さんが2016年に設立したHIROTSUバイオサイエンス(東京)の「N―NOSE(エヌノーズ)」。すぐれた嗅覚(きゅうかく)を持つ「線虫」が、がん患者の尿に含まれるにおいに反応する性質を活用する。同社によると、胃がんや乳がんなど計15種類を検知できるが、どの種類かはわからないため、詳しい検査につなぐ入り口(1次スクリーニング検査)の位置付けとなる。19年12月に久留米、小郡両市職員を対象にした実証試験を経て、昨年1月に実用化。福岡市内の提携医療機関で採尿したり、自宅で採取した尿を博多区の専用ステーションに持ち込んだりする方式で検査を受けることができる。さらに今年2月からは外出せずに検査を受けられるサービス「エヌノーズアットホーム」を県内と東京都で始めた。同社サイトから申し込めば自宅に専用容器が届き、そこに採尿。セイノーグループの運送業者が検体を受け取り、約6週間後、自宅に検査結果が返送される仕組みだ。検査費は送料込みで税込み1万3750円。現在は福岡、北九州、久留米、小郡、飯塚の計5市の住民が対象で、順次、県内全市町村に拡大するという。担当者は「見逃されるがんが減るきっかけになれば」と話している。申し込みは専用サイト(https://エヌノーズ.com)から。(竹野内崇宏)