生え替わりに重要な幹細胞=毛髪再生技術に応用へ―理研、臨床研究目指す


毛髪が長期間、周期的に生え替わるのに重要な幹細胞を特定したと、理化学研究所の辻孝チームリーダーらが11日までに英科学誌サイエンティフィック・リポーツに発表した。マウスでは実験容器内で毛を生み出す根元の器官「毛包」のもとを再生し、増やして移植する技術を既に開発しており、男性型脱毛症に応用するため、臨床研究の実施を目指している。
 臨床研究計画は昨年秋までベンチャー企業「オーガンテクノロジーズ」が主体となり進めていたが、新型コロナウイルス流行の影響などで中断した。理研は毛髪や歯の再生医療を実現するため寄付金の募集を始めたほか、パートナーとなる企業を探している。辻リーダーは「毛髪や歯が失われても命に関わらないが、生活の質に影響する。臨床研究を早く実施したい」と話している。
 毛の生え替わりは、毛包の中ほどにある「バルジ」と呼ばれる部分の幹細胞によって制御される。辻リーダーや理研の武尾真上級研究員らはマウスの毛包のもとを培養する条件を工夫し、皮膚に移植する実験を繰り返したほか、人の頭髪毛包を分析。その結果、細胞接着分子「インテグリン・ベータ5」など3種類の分子がある幹細胞と糖たんぱく質「テネイシン」が長期的な生え替わりに重要と分かった。
 毛や歯などの器官、臓器は胎児期に2種類の幹細胞の相互作用で形成され、辻リーダーは2007年に実験容器内で再現する「器官原基法」を開発した。男性型脱毛症に応用する場合は、後頭部に残った毛包の幹細胞を採取して培養し、毛包のもとを再生して増やした後、頭頂部などに移植する。 (C)時事通信社

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