三菱ケミカルホールディングス子会社の生命科学インスティテュートは28日、「Muse細胞」(ミューズ細胞)と呼ぶ細胞製品について、ALS(筋萎縮性側索硬化症)を対象とした治験(臨床試験)に着手したと発表した。2022年12月に完了を予定している。ミューズ細胞は、体のさまざまな臓器にある間葉系幹細胞から得られる。10年に東北大学の出沢真理教授が発見し名付けた。健康な人から採取した間葉系幹細胞からミューズ細胞を取り出し培養して凍結保管する。血管内に点滴で投与すると損傷した部位に集まり、必要とされる細胞に育って修復に役立つという。ミューズ細胞は神経細胞の活性化や再生が期待できることから、神経変性疾患であるALSに対して効果を示す可能性があるという。岡山大学病院で治験を実施する。ALSと確定診断された早期の患者5人を対象としている。木曽誠一社長は同日の記者会見で「ALSは、完治する治療法が見つかっていないトップクラスの難病と言われる。ミューズ細胞が革新的な治療法になれば」と語った。同社は他にも急性心筋梗塞や脊髄損傷など4症例を適用症としてミューズ細胞を使った治験を進めてきた。一部の適応症で21年度内に承認申請し、22年度内の承認取得を目指す。