ネアンデルタール人の遺伝子、コロナ重症化に関与か 研究


【パリAFP=時事】約6万年前にヒトゲノムに挿入されたネアンデルタール人の遺伝子の断片が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化リスクを高めることが分かったとする研究報告が9月30日、英科学誌ネイチャー電子版に発表された。ネアンデルタール人から受け継いだ遺伝子コードを保有する人が新型コロナに感染すると、人工呼吸器が必要となる可能性が3倍高くなるという。(写真は資料写真)新型コロナ患者は、集中治療室での治療が必要な人もいれば、軽症や無症状で済む人もいる。高齢者や男性、持病のある人が重症化しやすいことは分かっているが、今回新たに遺伝的要因も影響し得ることが明らかになった。報告書の共著者で独マックス・プランク進化人類学研究所の遺伝学研究分門トップのスバンテ・ペーボ氏は、「ネアンデルタール人の遺伝的遺産が、現在のパンデミック(世界的な大流行)の中でこのような悲劇的な結果をもたらしているというのは衝撃的だ」と述べている。「COVID-19宿主遺伝学イニシアチブ」が最近行った研究では、ヒトゲノムの染色体23本のうち、3番染色体の特定領域にある遺伝子変異が新型コロナ重症化と関連していることが分かった。この領域はネアンデルタール人を起源とする遺伝子コードを含むことが知られている。そこでペーボ氏は、共著者で同じくマックス・プランク研究所の研究者であるフーゴ・ゼベリ氏とともに、COVID-19とネアンデルタール人の遺伝子コードとの関連を調べることにした。すると、南欧で見つかったネアンデルタール人1人には、約5万塩基に及ぶほぼ同一の遺伝子領域があることが確認された。一方、この特定領域はロシア・シベリア南部で見つかったネアンデルタール人2人と、ユーラシア大陸にかつて存在した別の初期人類デニソワ人1人の標本には含まれていなかった。研究チームは、現生人類とネアンデルタール人が約50万年前に共通の祖先からこの遺伝子断片を受け継いだ可能性はあるものの、より最近の交配によって現生人類の遺伝子プールに入った可能性の方がはるかに高いと結論付けた。この研究では、ネアンデルタール人の遺伝子断片に伴うリスクが地球上に均等に分布しているわけではないことも判明した。この遺伝子断片を保有する人の割合は、欧州では約16%なのに対し、南アジアでは約50%に上り、バングラデシュでは63%と最も高かった。また、東アジアとアフリカでは、保有者がほとんどいなかった。【翻訳編集AFPBBNews】〔AFP=時事〕

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