がん化のリスクあるiPS細胞を除去 肥満治療薬で


iPS細胞を変化させる際に、肥満の治療薬を加えることで、がん化のリスクがある細胞のみを取り除くことができたと、慶応大などのチームが発表した。iPS細胞の純度を高めることで、細胞移植などの安全性を高められる可能性がある。米科学誌「アイサイエンス」に6日に掲載された。iPS細胞はさまざまな細胞に変化させることができ、目の組織や神経、心筋の細胞にして患者に移植する治療法が研究されている。しかし、うまく変化できない細胞が残っていると、がん化するおそれがあることが課題になっている。チームは、変化する前のヒトのiPS細胞内のたんぱく質を解析し、細胞の増殖に脂肪酸が関係していることをつきとめた。そこで、脂肪酸の合成を妨げる効果があり、米国などで肥満治療薬として承認されている「オルリスタット」をiPS細胞が入った培養皿に加えた。すると、変化前のiPS細胞を死滅させることができたという。また、ヒトiPS細胞から神経細胞に変化させる過程でこの薬を加えて72時間観察したところ、変化できなかったiPS細胞だけをほぼ死滅させることができた。iPS細胞の純度を高める研究はほかにもあるが、今回の手法はコストが低く簡易で、一度に多くの細胞を精製できる強みがあるという。チームの遠山周吾・慶応大特任講師は「より臨床応用に向いている手法だと考えられる」と話している。(市野塊)

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