難病「潰瘍性大腸炎」血液検査で診断助ける 久留米大が実用化目指す


 久留米大医学部(福岡県久留米市)の水落建輝(みずおちたつき)講師(小児消化器肝臓病学)の研究グループが、国の指定難病「潰瘍性大腸炎」を診断するため、血液内の抗体を調べる手法を考案した。罹患(りかん)の確定に不可欠な消化管内視鏡による検査は、体が小さな子どもにとって負担が大きい。事前に血液を調べて内視鏡検査の必要性を判断することで、的確な早期診断が可能になる。

 潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜の慢性的な炎症が腹痛や下痢などを引き起こす。原因は不明。国内の患者は推計約22万人で、安倍晋三前首相の持病でもある。発症のピークは20代で、子どもの患者も少なくない。

 グループは、患者の血液内に抗体「PR3-ANCA」が増えることを確認。罹患を見極める一つの指標になるとして、10月13日付で専門誌に発表した。

 子どもは内視鏡が体内に入らなかったり、腸内を傷つけたりする恐れがある。先に血中の抗体量を調べて潰瘍性大腸炎の可能性を絞り込むことで、内視鏡使用を最小限に抑えられる。腸内の状況によっては罹患を確認できない事例もあり、血液検査を判断材料に活用することもできるという。

 グループは既に、潰瘍性大腸炎と同じ炎症性腸疾患の難病「クローン病」の患者で、抗体「ACP353」が増えることを突き止めている。水落講師は「血液検査によって潰瘍性大腸炎とクローン病も見分けることができる」と話す。

 PR3-ANCAの検査は他の病気の診断に用いられており、グループは潰瘍性大腸炎での活用が普及するよう期待。ACP353の検査は名古屋市の検査薬製造会社、医学生物学研究所と共同で実用化を目指すという。 (野村大輔)

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