マウスのES細胞(胚性幹細胞)から、大きさ約1ミリの拍動するミニ心臓を作ることに成功したとする研究成果を、東京医科歯科大などの研究チームが3日、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズで発表した。血液は流れていないが、心室と心房が連動して動くポンプ機能を確認したという。ミニ心臓は血管がなく、栄養を表面からしか取り込めないため、更に成長させて別のマウスへ移植することは難しい。ただ、薬剤で不整脈の心拍を起こすことに成功しており、同大の石野史敏教授(発生生物学)は「ミニ心臓で新薬の効果を調べたり、毒性を評価したりできる」と話している。石野教授によると、ミニ心臓は受精から14日目の胎児の心臓に近い形をしている。研究チームは、臓器となる細胞が備える「自己組織化」と呼ばれる仕組みを導く独自の手法を考案。マウスのES細胞を心臓の形成に必要なたんぱく質が含まれたゲル状の培地に置いたところ、心室と心房組織への順調な分化が確認できた。従来は細胞を培地に埋め込んでいた。同様の手法で、ヒトのiPS細胞(人工多能性幹細胞)から大きさ1ミリ程度のミニ心臓を作る研究も進めているという。慶応大の福田恵一教授(循環器内科)の話「心臓は複雑な臓器で、哺乳類で形成できたのは興味深い。試験管内で心臓の各部の発生を観察できるようになり、様々な研究で役立つだろう」