細胞内の鉄分減少で肝臓がん抑制 川崎医大・日野教授ら確認


川崎医科大(倉敷市松島)の日野啓輔・肝胆膵(すい)内科学教授らのグループは、薬剤で細胞内の鉄分を減らすと特殊なタンパク質が増え、機能が衰えた小器官「ミトコンドリア」の分解を促し、肝臓がんの発生を抑制することをマウスによる研究で突き止めた。肝臓がんなどの新たな治療法の開発につながる成果という。 ミトコンドリアは、細胞の働きに必要なエネルギーを作っているが、機能が低下すると遺伝子を損傷させ、がんなどの病気を引き起こすことがある。 グループは、細胞内の鉄分を減らす薬剤「鉄キレート剤」が、衰えたミトコンドリアの排除を促すという他のグループの研究に着目した。肝臓がんにしたマウス12匹にこの薬剤を投与して16~30週後に分析。投与しなかった場合に比べ、がんの数が平均80%以上減り、直径も同60%以上小さくなる効果を確認した。 詳しく調べたところ、いずれもタンパク質「ミトコンドリアフェリチン」が増え、衰えたミトコンドリアの分解を促進させていた。このタンパク質の発生を抑えるよう処置すると、がん抑制効果も消えたという。 ミトコンドリアはあらゆる細胞に存在。日野教授は「肝臓がんだけでなく、他のがんにも応用できると考えており、研究を進めたい」としている。 研究成果は昨年9月、欧州の科学誌電子版に掲載された。

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