がん診療補助、認定看護師を育成 「特定行為」で職務に広がり 静岡がんセンターで新制度研修


医師の判断を待たずに手順書に基づいた診療補助を看護師が実施できる「特定行為」の研修を組み込んだ新たな認定看護師制度が本年度始まり、県立静岡がんセンター(長泉町)で教育課程研修が始まった。病院から地域、在宅へと医療現場が広がる中で、あらゆるニーズに対応できる看護師の育成を目指す。
 特定行為を組み込んだ研修を実施しているのは全国8施設に限られ、県内では同センターが唯一の実施機関。がん看護に関連する薬物療法▽放射線療法▽乳がん▽緩和ケア▽皮膚・排泄(はいせつ)ケア-の5分野で、全国から計48人が受講する。
 受講生は特定の看護分野の専門性を高めるのと同時に、床ずれをした皮膚の処理や点滴の管理など、医学的知識をベースとした特定行為の研修に臨む。看護師による特定行為は、医師が不在であっても、看護師が患者の病態から診療補助の必要性を判断して重症化を防ぎ、医師の負担軽減につなげる狙いがある。
 新制度の教育時間は約800時間。同センターはセンター内での講義や演習に加えて、「受講者が普段勤務する医療機関で受ける特定行為実習を重視している」という。職場での理解を深め、修了後も医師と連携して職務に当たれるようにするためだ。
 厚生労働省は特定行為研修を修了した看護師数の目標を25年までに10万人とするが、昨年9月時点で約1800人にとどまる。養成が進まない背景に、看護師の特定行為が医師の理解を得られず、活動機会が少ない現状がある。
 認定看護師教育課程の課程長で同センター看護師の谷口貴子さんは看護師が特定行為研修を受ける意義について「知識は強み。看護に対する思考が深くなり、患者に向き合う際の選択肢が増える」と強調。「がんセンターで最新の治療法や多職種連携も学び、現場のニーズや課題を把握してほしい」と期待した。

 <メモ>認定看護師制度は、1995年に創設され、約2万人が登録している。2020年度の新制度開始に伴い、感染管理や糖尿病看護など19分野に再編された。15年度から始まった特定行為研修とは異なる制度で、受講希望者はそれぞれの実施機関で教育を受ける必要があった。
 現行の教育機関は26年度までに新制度に移行する必要がある。20年度は静岡がんセンターを含む全国8施設が対応した。

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