福島医大「がん幹細胞標的治療法」有効性証明 放射性核種投与


福島医大先端臨床研究センターの織内(おりうち)昇教授(60)らの研究チームが、同大で製造する放射性核種(放射性物質)の「アスタチン」を投与して、がん細胞を生み出す「がん幹細胞」に直接放射線を照射する治療法の有効性を動物実験で証明した。新たながん治療法につながる可能性を示す研究成果で、織内氏は「福島で放射性核種の研究が進んでいることを示すことができた」と意義を語った。4月下旬に英科学雑誌サイエンティフィックリポーツに発表した。織内氏によると、がん幹細胞は、がん治療によってがん細胞が減少しても、より悪性度が高いがん細胞を供給する機能を持つとされており、がん幹細胞を狙ったがん治療法は確立されていないという。織内氏は放射性薬剤を投与してがんを治療する「RI内用療法」の研究者。アスタチンが出す放射線「アルファ線」は数十マイクロメートル(1マイクロメートル=1000分の1ミリメートル)しか飛ばないため、他の細胞をあまり傷付けることなく、がん幹細胞を破壊できる。研究では、ヒトの急性骨髄性白血病のがん細胞を埋め込んだマウスに、がん幹細胞に集まりやすい物質にアスタチンを付けた放射性薬剤を投与した。結果、他の正常な臓器に大きな障害を与えずに、がん幹細胞のみを破壊できることを証明したという。織内氏は、研究が動物実験の段階にすぎず、臨床応用にはさらなる研究が必要とした上で「論文をきっかけに世界中の研究者がこの治療法に興味を持ち、研究を前に進めてもらえればありがたい」と話した。先端臨床研究センターは東日本大震災と東京電力福島第1原発事故を受けて医大に整備された施設で、最先端機器「サイクロトロン」を使い放射性核種も製造している。織内氏は「今回の成果はセンターにとって大きな一歩だ」とも述べた。

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