脳梗塞の治療からシミ・たるみの改善まで 再生医療の実用化を検証


再生医療で使用する幹細胞の培養技術を持つフルステム(沖縄県那覇市)と細胞加工物を製造するセルソース(東京都)、当山美容形成外科(那覇市)、大阪大学(大阪府)の4者は幹細胞から放出される細胞の再生を促す微小物質「エクソソーム」を使った再生医療の実用化を進めている。既存の治療は幹細胞を体内に注入するが、エクソソームを直接入れることで効果が高まるかを検証する。実用化されれば日本初となる。再生医療による治療は幹細胞を体内に注入して再生を促しているが、幹細胞が体内でどのように作用し再生を促しているかは解明できていなかったという。だが、近年の研究でエクソソームが再生を促す中心的な役割であることが発見され、実用化への期待が高まっている。県の補助事業8千万円を活用して、10月下旬から実証事業を開始。幹細胞は各社がそれぞれ独自に培養しており、エクソソームの有効性や安全性にばらつきが出る可能性があるという。そのため、フルステムが品質に偏りのない幹細胞の培養方法を確立する。セルソースが培養液からエクソソームを取り出し、大型の動物に投与して有効性や安全性を評価する。2021年内に効果の確証が得られる見通しのため、当山美容形成外科が治療で利用する。エクソソームを含んだ培養液と、エクソソーム自体を注入する二つの方法で、毛髪の再生や皮膚のシミ・たるみの改善、脳梗塞などを治療する。大阪大学は無菌培養の技術を持っており、フルステムやセルソースに指導する。県の実証期間は22年3月までで、同4月以降は県内医療機関へ普及する。フルステムは人手を掛けて培養していた幹細胞を、医療用の不織布を培養液に浸すだけで自動培養する装置を開発しており、県内の医療機関に販売する。装置を導入した医療機関は幹細胞の量産化が可能となり、治療費が大幅に下がるという。沖縄発の再生医療技術として県外や東アジアに売り込み、航空貨物の増加や医療ツーリズムでの観光誘客につなげる。25日、県立図書館で事業を発表したフルステムの千葉俊明社長は「県内で製造と治療の双方を広げて、沖縄を再生医療の拠点にしていきたい」と意気込んだ。

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