退院後のケア、画面越し説明 磐田市立総合病院


患者の退院時に、医師や看護師、家族らが病状や退院後のケアなどを話し合う「退院時カンファレンス」。新型コロナウイルス感染拡大の影響で行えないケースが増え、磐田市立総合病院が地域包括ケア情報システム「シズケア・かけはし」のウェブ会議機能を活用し、リモートでの実施に乗り出した。患者の様子を動画で分かりやすく共有する。システムを運営する静岡県医師会シズケアサポートセンターも新たな使い方として注目する。
 「今から褥瘡(じょくそう)の処置をお見せします」。病院一室で開かれた女性入院患者(90)のカンファレンス。主治医や看護師らがタブレット端末を介して、退院後に入所予定の施設の看護師や相談員に患部の処置や食生活を説明した。
 カンファレンスは、患者が退院後も地域の医療サービスを受ける場合などに開く。主治医や看護師、家族に加え、地域の医療関係者らが会議を開くことで家族らの不安解消につなげる。一方、密になりやすいため、コロナ禍で実施が大幅に減少。入退院管理室の数田志帆室長は「カンファレンスを経ない退院は本人や家族に不安が残る」と指摘する。
 同病院は、安全性が担保され近隣施設も導入するシステムのカンファレンスへの本格活用を開始。口頭で説明していた入院中の食事や患部の処置法、自宅の環境などを動画で共有している。様子を目で把握することで、ケアマネジャーらがプランを作りやすくなり「一歩進んだカンファレンスができる」(数田室長)という。
 市内の医療・介護関係者を対象に研修を開くなどシステム普及に力を入れる。数田室長は「患者さんが退院後も安心して生活できるように、情報を具体的に共有し、支援していきたい」と意気込む。シズケアサポートセンターの望月隆弘地域医療・医療介護連携課長も「一つの成功事例として広がってくれたら」と期待する。(磐田支局・駒木千尋)
<メモ>「シズケア・かけはし」は、在宅医療・介護連携の推進を目的に、県医師会シズケアサポートセンターが2017年に本格稼働させた。掲示板機能などを活用した情報共有や、患者のニーズに合った施設検索ができる。
 センターによると、ツール利用登録数は県内の医療機関や介護保険施設など計8600施設のうち、1月末時点で1073施設にとどまる。望月課長は「高齢化で医療ニーズが増える一方で、医療・介護従事者の大幅な増加は見込めない。穴を埋めるのはICT(情報通信技術)」と強調。普及に向け「多忙な医療・介護従事者にどう広げるかが課題」と語る。

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