静岡市の救急患者搬送 葵、駿河区へ偏り慢性化【新型コロナ】


静岡市で救急患者搬送が静岡地区(葵、駿河区)に偏る事態が慢性化している。医師不足状態の清水地区(清水区)で対応しきれず、市全域の医療体制に影響を及ぼしている格好だ。清水区でも一定数の患者を受け入れているものの、医療従事者の負担増はより深刻だ。これからインフルエンザや心疾患などの急性期患者が増える冬本番を迎える。関係者は「行政と病院が課題を共有し、医師確保など抜本的な対策が必要」と指摘する。
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 「ここでしか対応できない患者も県中部全域から運ばれてくる。十分な医療を提供できない事態は避けたい」
 市内唯一の高度救命救急センターである県立総合病院(葵区)の後藤和久事務部次長は危機感を隠さない。
 今冬は患者1人当たりの診療時間が長くなると予想されるのが理由。新型コロナウイルスとインフルエンザの同時流行を念頭に、発熱患者に施すインフルエンザ検査を飛沫(ひまつ)防止の観点から休止し、問診や触診を主にするためという。
 関係者によると、市内で主に救急患者が搬送される基幹8病院の2019年度の受け入れ件数は約2万8千件。県立総合、静岡赤十字、静岡済生会の3病院が約6割を受け入れ、県立総合病院は約25%が清水区からだった。3病院は重篤患者の治療を行う3次救急にも対応するため、関係者は「本来提供すべき高度医療に手が回らないリスクを抱える」と指摘する。こうした静岡地区への偏重は十数年前から始まったとされる。
 一方、清水地区で救急を受け入れるのは市立清水、清水厚生、桜ケ丘の3病院。このうち桜ケ丘病院は月20日ほど夜間・休日救急当番も担当。関東の大学から医師の派遣を受け3人の当直体制を維持している。夜間当直医は翌日の日勤も兼ねるため、勤務はかなりハード。担当者は「ギリギリの状態」と打ち明ける。
 同病院は移転問題に揺れるさなかだが、市内の複数の病院幹部は「場所がどこになるかばかりが注目され、医療をどう維持するという本質が見過ごされてきた」と指摘する。県の奨学金を利用した若手医師を医師不足地域に派遣する制度も、賀茂地区や中東遠地区が優先され静岡市内には期待しにくいといい、「政令市として行政が指導力を発揮し、地域に根付く医師を地域で育てる仕組みが必要」と話した。

 <メモ>静岡市の救急医療体制 消防に救急患者の一報が入ると、病床の空き状況に応じて市内の病院に搬送される。夜間・休日については静岡地区(葵、駿河区)と清水地区(清水区)の2地区に分け、それぞれ内科と外科が開設されている。静岡地区で5病院、清水地区で3病院が輪番で担当し、小児科は静岡市全域で一つの病院が担当する。しかし、清水区では医師不足から担当の病院を充てられない日も目立っている。

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