遠隔で診断、服薬指導も 長崎県五島・嵯峨ノ島で実証事業


長崎県五島市や長崎大などは、医師が常駐していない三井楽町嵯峨ノ島で、インターネットを通じ遠隔医療を提供する実証事業を進めている。島民は島の診療所で、いつでもロボットの画面越しにオンライン診療や服薬指導を受けられる。薬も船や小型無人機ドローンで輸送。離島の新たな遠隔医療モデルとして、県内の他の離島での実用化も視野に課題を検証する。5日、事業の様子を報道陣に公開した。これまで、オンライン診療は初診を対面でする必要があったが、厚生労働省は4月、新型コロナウイルス収束までの時限措置として初診から可能にした。医師がいない離島では、島民や医師が船で往来せずに済み、島民の負担軽減や医療の質の向上が期待される。嵯峨ノ島は福江島と定期船でつながる二次離島で、人口は106人(9月末現在)。嵯峨島出張診療所には看護師1人が常駐する一方、医師は福江島の三井楽診療所から週に1回通う。実証事業は原則、月~金曜に実施。島民は初診、再診に関係なく、三井楽診療所や県五島中央病院の医師の診察をオンラインで受けられる。薬が必要な場合は医師が処方箋を出し、薬局の薬剤師が島民にオンラインで服薬指導。処方薬は嵯峨ノ島への定期船が発着する貝津港(三井楽町)まで陸路で運び、船かドローンで輸送する。オンラインでのやりとりには、アバター(分身)技術を搭載したロボットを使う。目の高さにある画面に医師らの顔が映り、患者は対面している感覚で話ができる。診察や服薬指導はタブレット端末を使い自宅で受けることも可能。5日は、市立嵯峨島小中教頭、江山孝則さん(47)がオンライン診療を体験。医師の診察後に薬剤師の指導も受け、ドローンで運ばれた薬を受け取った。江山さんは「(画面越しの)医師の表情はいつもと変わらない。今までの週1回に限らず、体調が悪くなったらいつでも診てもらえるのは安心感がある」と話した。実証期間は10月5日~来年2月12日。開始1カ月でオンライン診察を5人、服薬指導を10人以上が利用。情報通信技術を活用して離島の課題解決を目指す、国土交通省スマートアイランド推進実証調査の一環。五島市や長崎大、ANAホールディングスなどが共同で実施する。

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