たんの吸引や経管栄養の注入など医療的ケアの必要な子どもを育てる県内の親たちが、同じ境遇の親に向けて、子育てに役立つ経験や情報をまとめた冊子とホームページ作りを計画している。ケアの工夫や、外食、旅行のヒント、災害時の備えなどを50ページ余りで紹介する予定。日々、不安を抱える親の負担を減らし、子育てを楽しむ一助にと、制作費をクラウドファンディング(CF)で募っている。
企画したのは長野市川中島町の山本里江さん(49)。次女の佳奈さん(16)は、知能や言語、運動能力の発達に遅れが出るレット症候群という進行性の神経疾患がある。昨年、重度の誤嚥(ごえん)性肺炎を繰り返し、胃ろうや気管切開の手術を受けてケアが必要になった。入院中、在宅ケアの指導を受けたが、自宅に帰ると、判断に迷うこと、慣れずに戸惑うことが多かったという。
親の不安、悩みに応える本があったら―。フリーペーパーの企画営業に13年携わった経験から下絵を描き、医師などに相談。構想を固めた。
母親仲間の松本市波田、絈野(かせの)美和さん(43)も協力を申し出た。長男翔太さん(18)は大脳に先天性の異常があり、呼吸器管理などでほぼ付ききりでケア。胃ろうなどの手術前は医師の説明を受けても「すごく悩んだ」体験から、多くの親の気持ち、子どもの様子を知ることが「親の心の整理につながる」と考えた。
山本さん、絈野さんら県内の4人で今月、一般社団法人「医ケアの輪」を設立。親同士のオンライン交流会なども計画している。
冊子はCFの支援の返礼品とするほか、1冊500円で販売予定。情報の発信、交換用のホームページ作成費も含め、CFの目標額は250万円とした。県信用組合のCFサイト「ShowBoat(ショー・ボート)」で11月30日まで募っている。
(10月22日)