スマートフォンなどで離れた場所から診察を受ける「オンライン診療」が県内でも広まりつつある。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて厚生労働省は4月、規制緩和を拡大し、初診からのオンライン診療を限定的に認め、8月に当面継続することを決めた。受診の選択肢が増えたと歓迎の声が上がる一方、画面越しの診察は対面診療より情報量が少なくなるため、運用には慎重な声もある。あわのこどもクリニック(岐阜市粟野東)では、昨年4月の開業時にオンライン診療を導入していたが、新型コロナ感染を不安視して受診控えが目立った今年4月中旬、かかりつけの患者を対象に、運用を本格化した。患者が事前に送った症状や相談内容、患部を拡大した写真を互いに見ながら、専用のアプリで画面越しにやりとりする。これまで約100人がオンライン診療を受けた。うち2割弱の患者が今も継続して利用し、好評という。2歳の双子の母親(35)は「対面診療と使い分けながら、毎月オンラインを利用している。双子を抱えての通院は大変だし、選択肢が増えたのはうれしい。通院による感染の心配もない」と恩恵を実感し、「今後も続けてほしい」と願った。面家(おもや)健太郎院長(45)はオンライン診療のメリットを感じつつも「オンライン診療は100点満点ではない」と捉える。問診と視診に限られ、触診やその場での検査もできる対面診療と比べると情報量が少なくなるためだ。それでも「医者側も患者側もオンライン診療の長所と限界を理解し、より良い運用につながれば。ぜひ恒久措置に」と訴える。コロナ禍では慢性疾患の患者の受診控えが問題となった。多くの糖尿病患者が通う岐阜大病院(同市柳戸)では4~5月、約2割の外来患者が受診を控えたため、電話診療を実施。症状の悪化を防ぐため、食事や運動、服薬の状況を聞いて、薬を処方したという。同院は一部外来でオンライン診療を導入しようと準備を進めている。矢部大介病院長補佐(46)は「全ての糖尿病患者にオンライン診療が推奨できるわけではないが、電話でのやりとりだけでは十分でなかった反省もある。コロナの第3波到来を控え、映像を加えたオンライン診療には期待している」と可能性を語る。県医師会加入の県内1325病院・診療所のうち、今月1日現在で90施設がオンライン診療の届け出を行っている。常務理事でオンライン診療担当の三輪佳行医師(59)は「画面越しの診察は情報量が限られ、疾病を見落とすリスクも潜む。本来は対面が原則なので、オンライン診療を継続していく上で、医療の質や受診のしやすさ、医療費への影響など丁寧に議論を深めていきたい」と今後を見据えた。