新型コロナウイルスのPCR検査やインフルエンザ検査への活用を見込み、中東遠地区の企業と医師が開発し、試験運用してきた折りたたみ式検体採取ボックスが完成し、今月発売された。医療現場の声を受け、地域の企業の技術力を生かして組み立てと収納が容易な製品に仕上がった。設備の常設が難しい小規模医療機関での活用を想定している。
検査態勢強化の必要性を感じていたたなか循環器内科クリニック(袋井市)の田中総一郎院長と、掛川市の水処理機械製造「JFEアクアサービス機器」が共同開発した。試験運用は6月から同クリニックで実施し、改良を重ねた。全国から20件超の問い合わせがあり、商品化を望む声も寄せられたという。
ボックスは高さ2メートル、幅と奥行きが0.9メートル、重さが約20キロ。プラスチック段ボールの壁と透明アクリル板、手袋、天井板で構成し、医師が中に入って板越しに患者の検体を採取する。二つ折りにして収納可能。数分で組み立てられ、診療面積変更が不要の仮設として扱える。価格は税込み約30万円。
インフルの検査は鼻の奥を綿棒でぬぐう方法が一般的で、くしゃみを誘発しやすい。陽性患者の診断は感染リスクが高まるため、今年は各地の医師会がインフルの検査を実施せず、臨床症状による診断を基本とする方針を検討している。
ただ、検査での明確な診断のニーズもあるとみられ、田中院長は「初期段階は一定数の検査をしなければ流行の状況が分からない」と指摘し、同クリニックは初期段階のインフル検査にこのボックスを組み立てて検査を実施する方針。