拡大鹿児島大学大学院の金蔵拓郎教授(皮膚科学)の研究チームは31日、鹿児島市の鹿大桜ケ丘キャンパスで会見を開き、国際誌に新型コロナウイルス感染症の重症化を防ぐ体外循環療法の論文が掲載されたと発表した。想定される副作用も少なく、既に他の疾患で保険適用となっていることから、早期に臨床試験を実施し適用追加を目指す。治療法は正常な細胞も傷つけてしまう白血球のみを取り除く「顆粒(かりゅう)球・単球吸着除去療法」で、体外で血液を循環させて特殊なフィルターで原因となる白血球のみを取り除く。自己免疫疾患の潰瘍性大腸炎やクローン病などに対して保険適用されている。新型コロナ感染症でも、正常な細胞を傷つける白血球を制御できなくなることで、肺などが臓器不全に陥り重症化する「サイトカインストーム」が発生することが分かっている。スペインで6月、新型コロナに感染して肺炎を発症した潰瘍性大腸炎の患者に同療法を行い、両疾患が軽快した症例が報告された。同療法を重症リスクがある患者に用いることでサイトカインストームを未然に防ぐことが期待される。金蔵教授は「新型コロナの感染が拡大する中、少しでも役に立てることはないかと考えていた。国際誌への掲載で、同療法の保険適用へ向けて一歩前進した。早い時期に臨床試験を開始したい」と意気込みを語った。