健康増進にビッグデータ活用 新潟市、新潟大発ベンチャーと連携


新潟市は市民の健康寿命の延伸に向け、新潟大学との連携を強化する。新潟大医学部の教授らを役員に擁する同大発ベンチャー「iSEQ(アイセック)」(新潟市中央区)と業務委託契約を結び、市民の健診結果などをビッグデータとして分析。生活習慣など市民の特徴を踏まえた上で、健康増進の施策を講じていく。 業務委託契約は、市の「健康寿命延伸計画」の改訂に伴い締結。国民健康保険と後期高齢者医療制度加入者を基に、診療報酬明細書や介護情報など計約650万件のデータを匿名化して分析する。 分析データは、市がこれまで行ってきた区ごとの集計を継続するほか、より医学的な現状分析に利用。健診受診率や血液検査の数値、飲酒頻度などから、健康寿命の地域ごとの課題も把握する。アイセックはデータを基に来年1月までに効果的な事業を提案し、生活習慣の改善を促すような市民向けのメッセージも考案する。 アイセックは昨年12月に設立されたばかりだが、オンライン健康支援事業を手掛けるリンケージ(東京)を創業した木村大地氏(39)=西区出身=が社長CEO(最高経営責任者)に就き、取締役CMO(最高医療責任者)は生活習慣病を専門とする新潟大医学部の曽根博仁教授(55)が務める。 木村社長の健康寿命に対する思いは強い。15歳の時に剣道の恩師をがんで亡くした。恩師の家族が「検診さえ受けていれば」と後悔していたことが忘れられず、健康支援の仕事に携わっているという。 一方、曽根教授は、自身らが発見した科学的知見と、市が保有する膨大なデータを結びつけ、研究成果を市民に還元したいと強調。「地元の大学として現場の役に立ちたい」と語る。 今回の契約では、区など比較的広い範囲での生活改善の呼び掛けが中心となる。ただ、アイセックは分析したデータから発症や重症化のリスクを予測し、直接個人に治療や生活改善を促す方法もあるとし、木村社長は「いずれは両方のアプローチで健康寿命の延伸を担いたい」と話した。 市はこれまでも同様の分析を別の業者に委託してきたが、地元の新潟大と連携するアイセックへの期待は大きい。市保健衛生総務課健康政策室は「これまで以上に科学的知見に基づいたメッセージを市民に送ることができ、健康増進に効果的な事業ができると思っている」としている。

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