マスク不足 医療機関ギリギリの節約 手作り使用も


新型コロナウイルスの感染が拡大する中、道内の医療機関や介護施設のマスク不足が深刻化している。病院では感染予防のためのガウンやゴーグルなどの防護具も品薄で、診療などへの影響も懸念される。介護施設は事務職員のマスク配布数を制限したり、手作りマスクでしのぐところも。専門家は国や自治体には「優先順位を見極めた分配を」と求めている。「次のマスクの入荷見通しが立たず、在庫を大事に使うしかない。こんなことは初めて」。札幌市中央区の時計台記念病院の後藤昌一事務部長は困惑する。同病院は患者と直接接しない事務職員を中心にマスクの使用枚数を1日1枚に制限。1日当たりの病院全体の数を通常の3分の1の約300枚に抑えているが、今後入手できなければ1カ月ほどで尽きてしまう。後藤事務部長は「衛生上、これ以上の制限は難しい」とこぼす。看護師の新型ウイルス感染が判明した同市中央区の斗南病院もマスク確保に苦慮する。同病院は感染者と接触した全職員の陰性を確認した上、院内を消毒し17日に外来を再開した。4月末までに必要な約2万5千枚を確保したが、風邪症状のある患者に接した後は替えざるを得ず、奥芝俊一院長は「診療態勢に影響が出かねない」と心配する。医療機関はマスクだけでなく、ゴーグルやガウンなどの品薄状態にも不安を募らせる。道北の自治体病院の事務局長は「業者に問い合わせても、次の入荷のめどがたたないと言われる。一方で感染対策を考えると、利用を制限することも難しい」と言う。感染症の重症化リスクが高いとされる高齢者の施設もマスク不足に頭を悩ませる。道の2月末調査によると、道内の高齢者向け入所施設1210カ所のうち、1カ月以内にマスクの備蓄がなくなると答えた施設は55・4%。除菌アルコールは、54%が1カ月以内に底をつくと回答した。空知管内新十津川町で特別養護老人ホームや通所介護施設などを運営する社会福祉法人「明和会」は、3月末までの分のマスクしかない。事務職員は着用を控え、介護士も利用者と一緒に手作りした布マスクなどでしのいでいる。厚生労働省や道は高齢者施設などに優先的にマスクを配布するとしているが、西川雅浩理事長は「高齢者施設は数も多く、十分な数が分配されるか分からない。入荷状況次第ではサービスの制限も検討せざるを得ない」と話す。感染症コンサルタントとして医療機関に感染対策を助言する岸田直樹医師(札幌)は「健康な人が屋外などで常時、マスクをしても予防効果はあまりない。密室に多数が集まる時、高齢者と接する時など着用すべき場面を見極める必要がある」と、買い占めに走らないよう求める。一方、国や自治体には「緊急度や感染リスクの高さを適切に判断し、分配することが求められる」と強調する。(斉藤千絵、田鍋里奈)

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