岐阜大病院(岐阜市柳戸)を基地病院として運航する県のドクターヘリが今月上旬、運航4千回を超えた。2011年の運行開始以来、時間との闘いである救急医療の現場で、ドクターヘリの出動がなければ救われなかった命もあった。同大高次救命治療センターの小倉真治センター長(61)は「初期救命が1分遅れるだけで死亡率が上がり、後遺症が悪くなる症例もある。救える命を確実に救うために、今後も運航の安全を第一に、迅速に患者と医師をつなげたい」と話す。ドクターヘリは11年2月に運航を開始。現在は平均で年400~500件の出動がある。飛騨の山間部では、近隣の高次医療機関まで車では数時間を要する地域もあった。だがドクターヘリの導入で、同病院から県最北地域に35分ほどで到着できるようになった。フライトドクターとフライトナースが搭乗するドクターヘリは現地で初期救命が行えることから、急性期の重症患者の救命率が格段に向上。ゴルフ場での心肺停止は、過去に出動した14例のうち6例の患者が社会復帰した。「年間の出動数の1割がドクターヘリでなければ救えない命だった。『1分を削り出せ』を合言葉に行政、消防、医療機関が連携してスムーズな運航につなげ、県内の救急医療に関する地域格差は解消された」と胸を張る。小倉センター長は、03年の同大教授就任以来、県内の救急医療体制の整備を進めてきた。最も重篤な救急患者を受け入れる同センターには現在、7人の救急指導医、18人の救急専門医を含む28人の救急専従医師が在籍し、中部地区でも屈指の体制を誇るまでになった。「ワーストから日本トップレベルの救急医療を提供できるまでになった。県内のどこの場所であっても、誰もが平等に最善の医療を受けられるようにしなければいけない。そのために今後も人材育成を進め、安全で迅速なドクターヘリの運航を続けていきたい」と話す。